JR西日本は5月14日、新たな決済サービス「Wesmo!」を5月28日に開始すると発表した。QRコード決済に対応し、クレジットカードのJ-WESTカード、交通系ICのICOCAと組み合わせた決済サービスとして、5年後には利用者300万人を目指す。また、カードとICOCAをあわせたキャッシュレス決済として、取扱高1兆円を目指すサービスにしていきたい考えだ。
Wesmo!は、QRコード決済や特別な「BLUEタグ」を用いたタッチ決済で支払いを行う新しい決済サービス。JR西日本が1月に第二種資金移動業に登録され、これまでサービス開始の準備を進めてきた。
第二種資金移動業は、100万円までの送金が可能な資金移動業で、ICOCAのような電子マネーは前払式支払手段発行業として位置付けられる。同社はこのWesmo!に向けて、国内鉄道事業者としては初めて資金移動業者となり、「送金」を伴う決済サービスの構築が可能になった。
●160万箇所でサービス開始 キャッシュレス決済の「重荷」解放へ
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Wesmo!では、日常生活の買い物や食事、電車の移動といった動きを活性化させて、地域の経済活性化も目指すというコンセプトで開発された。
JR西日本圏内を中心に、全国にサービスを拡大したい考えだが、まずはJR西日本グループのほぼ全ての商業施設、JR西日本のネット予約「e5489」、Smart Code加盟店で利用ができる。Smart Code加盟店は全国にあり、2025年1月には150万カ所を超えたとされていて、これを含めて160万カ所でのサービス開始となる。
この中には、「BLUEタグ」を設置した店舗も含まれる。これは、店頭に設置したNFCタグをタッチすることでWesmo!から決済が行える仕組みで、店舗はタグを設置するだけで決済が可能になるため、気軽にWesmo!対応できる。
この背景には、キャッシュレス決済に関する「重荷」があると同社は説明する。キャッシュレス決済対応に関する端末費用や手数料の負担に対しては、タグだけで対応できるため機器コストが不要で、さらに手数料も1.9%を実現した。これは、有料プラン未加入時で1.98%というPayPayの手数料率を参考にしたそうで、より安価な手数料を実現した。
さらに、キャッシュレス決済だと入金が翌月になるサービスも多いことから、資金繰りに影響するという店舗も多い。そうした課題に対しては、資金移動業であることを生かして、最短翌日に加盟店アカウントにWesmo!残高として入金できるようにした。
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日本では法人間の取引でキャッシュレス化が遅れている。手元現金が必要になるのでキャッシュレス化が難しいという声も根強く、Wesmo!残高で入金されても仕入れができなかったり、逆に現金などで仕入れしても銀行手数料のような取り扱いコストが発生したりする。
Wesmo!残高は、取引先などにも送金できるため、手数料が発生せずに、最短翌日入金の残高を使って仕入れができるようになる。さらに今後は、従業員の給与支払いにもWesmo!が使えるように準備を進めており、デジタル給与払いの申請のために厚生労働省との話し合いも進めているという。
こうした課題解決を目指したのがWesmo!だという。こうしたメリットから店舗側の参加を促し、利用可能店舗の拡大につなげたい考えだ。
●会員サービス「WESTER」を通じてポイントを付与 最大4.5%還元に
ユーザー側には、同社が提供する会員サービス「WESTER」を通じてポイントを付与することで、お得さなどをアピールして利用につなげる。WESTER IDとひも付く形でポイントとWesmo!が連携。WESTER IDにひも付くJ-WESTカードでWesmo!にチャージすれば3.0%、Wesmo!で支払いをすれば0.5%、WESTERアプリやWESPOアプリを提示すれば1.0%、最大4.5%が還元される。
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こうしてためたポイントは、交通事業者の強みを生かして鉄道チケットとの交換でお得になるなど、「1ポイント1円以上と感じられる体験価値」を提供すると同社。加えてアプリのUI/UXを洗練させ、目標達成に向けて近づいていくワクワク感を得られる作りにして、利用の促進を図る。
Wesmo!残高は、資金移動業として現金からのチャージによる残高と、前払式支払手段としてのチャージ残高の2種類が保管される。資金移動による残高はWesmo!ユーザー同士の送金にも使えるため、割り勘やお小遣いといった使い方も可能にした。
●Wesmo!からICOCAへのチャージ機能も提供予定 マーケティングへの活用も
また、2026年度にはスマートフォンにカード型のICOCAをかざしてWesmo!からチャージをする機能も提供予定。現時点では、WESTERポイントをチャージできるかどうか未定ということだが、いずれにしても子供のICOCAカードに親がチャージする、といった使い方もできるだろう。
WESTERアプリやWESPOアプリとの連携も想定されており、それぞれのアプリからWesmo!を呼び出して素早く支払いができるようにした。
さらにWesmo!での決済をすると、「どの店で、いつ、誰が決済したか」が分かるため、これを「ほぼリアルタイム」に収集することでデータ連携によるマーケティングにもつなげる。
特にこのデータを活用した近隣への集客、ユーザーの回遊性の向上を図ることが狙いで、「昼時にランチの支払いをした」人がいれば、次にカフェに寄ることを想定してクーポンなどで提案をして、WESTERアプリでナビゲーションする、といった具合に、サービス連携によって地域の活性化にも寄与したい考え。
このリアルタイム性を生かしたスタンプ機能も用意し、例えばキャンペーンに活用するなども行う。
●従来のクレジットカードとICOCAだけでは足りない理由
WESTER会員は1000万人を突破し、関西圏での利用者は拡大している。これをさらに拡大するためには、従来のクレジットカードとICOCAだけではなく、「決済に伴うデータを活用して価値を届ける重要性を感じている」と同社。ICOCAだけでは日本全国に価値を届けられないとして、JR西日本沿線以外での利用拡大も目指したことが、新たな決済サービスの開発につながった。
主力はJR西日本管内だが、「多くの人は複数の決済サービスを使い分けており、その選択肢の1つになる」ことを目指し、たまったWESTERポイントで他のエリアに行ったときの買い物に使ったり、少しずつためたWESTERポイントを関西出張の際に利用したり、といった使い方などを想定する。
「JR西日本経済圏といわれると、JR西日本エリアというイメージになってしまうが、西日本を起点に、日本中とどうコミュニケーションを取っていくかが課題」。そう同社は指摘し、サービスを拡大しつつ、ワクワクするような体験の提供など、独自性を提供することで、全国での利用拡大を図りたい考えだ。
JR西日本は、四国や九州でもWESTERの促進を図っており、まずはこうした方向から展開していくことになるだろう。その後、いかに関東、東北へとつなげていくか、JR東日本の牙城でもあり、今後の戦略をどう描くかが、Wesmo!成長の鍵となりそうだ。
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