パスカル・ヴェアライン(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム) 2024/25年フォーミュラE第8戦&第9戦東京E-Prix
今年も東京ビッグサイト周辺に設けられた東京ストリートサーキットでレースが行われる2024/2025年ABB FIAフォーミュラE世界選手権第8戦&第9戦『東京E-Prix』。5月16日(金)には、マキシミリアン・ギュンター(DSペンスキー)、オリバー・ローランド(ニッサン フォーミュラEチーム)、ニック・キャシディ(ジャガーTCSレーシング)の3名が2年目の東京E-Prixに向けて抱負を述べた。
■ランキングトップ、ニッサンのローランドは雨対策に「白線を確認」
まず現在ドライバーランキングトップで、昨年の東京E-Prixではポールポジションから2位の成績を収めているローランド。ニッサン・フォーミュラEチームの母国である日本での開催ということで、その士気は高い。
「昨年の東京E-Prixは本当に良い週末を過ごすことができ、2位で終えることができた。今年は昨年よりも良い結果を残せたらいいけど、各チームの競争力も高い。天候も昨年とは異なる(※編注:土曜日が雨予報)ことが予想されているけど、最大限の努力をしたい」
「今シーズンはここまで良い結果を残せている。クルマのパッケージも全体的に良いし、マイアミを除けば予選はすべて4番手以内だから文句はない。だからといって油断するのではなく、今続けていることを素直に今後も続けていきたいね」
日本のファンが待ち望むニッサン母国優勝に向けて、ローランドはコースの一部変更と雨予報が気になると続ける。そんななかでも市街地コースならではの“雨対策”を行っている様子。
「東京ストリートサーキットは勇気を試されるから大好きなコースだ。かなりタイトなテクニカルなコースで、場所によっては勇気が求められる。コースに出ることが本当に楽しみだけど、ホワイトライン(路面の白線)が多いから、雨だとかなり難しくなるだろうね」
「だから、今日のコースウォークでは明日雨が降ったときに向けて、コースの白線の量と数を確認したんだ。みんな(他ドライバー)も状況は一緒だと思うけど、とにかくコースに出て走行を楽しみ、できる限り多くのことを学ぶ必要がある。明日はまた別の挑戦になるはずだ」
■日本のエネルギーは「唯一無二」とキャシディ。戦略で上位を狙う
そして「東京に戻ってくることができて最高だよ! 僕は日本でのレースが本当に大好きで、日本の雰囲気とエネルギーは他に類を見ない唯一無二のものだからね!」と笑顔を見せたのは、2015年から2020年まで日本のレースを戦ったキャシディだ。
キャシディは2021/2022年シーズンからフォーミュラEに参戦。昨シーズンからは“ワークス”のジャガーTCSレーシングに加入し、ランキング2位という成績を残している。そんなキャシディは昨年の東京E-Prixを7位で終えているが、今年は上位進出を狙いたいと語る。
「昨シーズンで言うと、このふたり(ローランドとギュンター)に匹敵するマシンは僕たちだけだったように感じたけど、残念ながら東京E-Prixではチャンスを得ることができず、予選で下位に沈む厳しいレースだった。でも、今年もチャンスはあるはずだから、良い成績を残したい」
そう語るキャシディは土曜日の雨予報と、今季から導入されたピットレーンでの急速充電『ピットブースト』を活かした戦略で「パフォーマンス差を埋めたい」と抱負を続ける。
「僕たちはとても良い戦略とメンバーを持っている。とくに戦略は僕たちの強みのひとつだから心配していない。今週は土曜日と日曜日でコンディションが違うことが予想されるけど、どちらかと言うと『戦うためのポジション確保』に重点を置く。それがチームにとって、良い流れを作る絶好の機会になるだろうからね」
■昨年優勝者のギュンターは慎重姿勢「ゼロからのスタート」
昨年初開催された東京E-Prixで初代ウイナーに輝いたギュンターにとって、今年の東京E-PrixはマセラティからDSペンスキーに移籍しての一戦になる。コースも一部変更されていることから、楽観視はできないと言う。
「また東京に戻ってこれて嬉しい。このサーキットは教科書どおりではあるけど、本当にクールなコースだ。昨年は僕が勝ったけど、今年はみんなにとってもゼロからのスタートになるから、今年も勝てるとは限らない」
「フォーミュラEというシリーズは、本当に“地に足をつけて”物事を進める必要がある。そのなかで、今年も良いパフォーマンスを得ることができれば良いと思っているし、ポールポジションと勝利したジェッダ(サウジアラビアでの第3戦)での素晴らしい週末のように、シーズン後半に向けて勢いをつけたい」
■王者ヴェアラインが語る“雨レースの注意点”
また、会見直後にはメディアペンと呼ばれるドライバーの囲み取材が開催。現状の予報だと第8戦が行われる土曜日が雨予報ということで、オートスポーツwebは昨年王者のパスカル・ヴェアライン(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)にウエットレースでの注意点などを聞いた。
まず、ドライとウエットでの基本的な違いについてヴェアラインは「フォーミュラEのマシンはグリップがあまり強くないから、ウエットだとマシンの乗り味はかなり異なる」と説明する。
「当然ウエットだと視界が悪くなるから、予選ポジションはすごく重要になる。あと、雨でスライド量が多くなるから、マシンをコースに留めておくことも難しくなるんだ。でも、ときにはそれがすごく楽しいときもあるんだけどね(笑)」
スライドが楽しいという冗談とも本気とも受け取れる言葉で笑うヴェアラインだが、雨はフォーミュラEならではの“エネルギー管理”についても影響を及ぼすと言う。
「雨だと少し涼しくなるから、バッテリー管理は楽になる。また、ウエット路面だとブレーキングを早めにしてゆっくり走らないといけないから、エネルギー自体をあまり消費しない。つまり、エネルギー管理という面では楽になる」
「ただ、ブレーキングは非常に難しく、タイヤがロックしやすくなるからドライビングは難しい。立ち上がりではスピンしないようにスロットル操作にも注意しないといけないから、本当に難しいんだ」
また、最後にヴェアラインは「今年のハンコックタイヤはドライ路面では良くなったけど、ウエット路面のグリップは低くなったように感じる」と語った。
昨年のフォーミュラE東京E-Prixは金曜日こそ一時雨だったが、予選と決勝はドライ路面で行われた。今年は現時点で土曜日の第8戦が予選・決勝ともに雨天濃厚。東京市街地ウエットレースはどんな展開になるのだろうか。
[オートスポーツweb 2025年05月16日]