電車の中で“わざと飛沫を浴びせるおじさん”に狙われて…助けてくれた「赤の他人たち」の連携に感動

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2025年06月19日 09:20  女子SPA!

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 身近な交通手段のひとつである電車。しかし、さまざまな年代や価値観の異なる人たちが同じ空間で過ごすためトラブルはつきもののようです。

 今回は、運悪く“迷惑客”に遭遇してしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

◆“いつもの人たち”と平和な通勤のはずが

 派遣社員の山本綾香さん(仮名・33歳)は、電車通勤をしています。

「幸い、私が朝乗るのは下り電車なので車内に余裕があるんですよ。さすがにあまり座れはしないものの、見える範囲に立っている人は10人程度で、満員電車が苦手な私でもストレスを感じずに済むので気に入っています」

 綾香さんは毎日同じ時間の同じ車両に乗るため、いつも車内にいる固定のメンツのことがなんとなく気になるように。「あ、あの人髪切ったな」とか「2〜3日見かけなかったけど調子悪かったのかな?」など、密かに観察するようになっていきました。

 そんなある日、見慣れない50代後半くらいのおじさんが、綾香さんの乗る車両に駆け込み乗車してきたそう。

◆おじさんにロックオンされ、飛沫を浴びる羽目に

「そのおじさんは車内を見回すと『座れなかったじゃねーか! ふざけるなよ』と小声でしたが周りに聞こえるようにつぶやくと、舌打ちをしながら明らかに不機嫌な空気を撒き散らしていて。関わり合いたくないなと思いましたね」

 ですがその思いとはうらはらに、そのおじさんはその日たまたま座れていた綾香さんにロックオン。目の前までツカツカとやって来て吊り革を掴かむと……

「おじさんが明らかに嘘と分かる大袈裟な咳やくしゃみをして、目の前に座っている私に飛沫を浴びせてきたんですよ! もう本当に最悪な気持ちになりました」

 そのおじさんはもちろんマスクなんてしておらず、手や袖で口を押さえてもくれず、ダイレクトで綾香さんを飛沫攻撃の的にしているかのようでした。

「さらに『あ〜だるいな、座らないとやってらんねぇな』と席を譲るように催促するようなことを呟きだして。私はどうしても耐えきれなくて、もう泣き寝入りするしかないのかと席を立とうとしたんです」

◆助けてくれたのは、同じ電車の“いつメン”だった

 するといつも可愛い猫のトートバッグを持っている同じ車両のメンツの1人、20代後半くらいの女性が、そのおじさんに「これ差し上げますので今すぐ使ってください」と個包装のマスクを差し出しました。

「私はその女性を心の中でずっと“猫トートさん”と呼んでいたのですが、まさか彼女が一言も話したこともない私のためにこんな勇気のある行動を取ってくれるなんて……優しすぎて胸が熱くなってしまったんですよね」

 ですがそのおじさんはマスクを拒否し、ニヤニヤしながらさらに咳やくしゃみを繰り返したそう。

◆いつメンが次々と参戦してくれて……

「そしたら近くにいた他の乗客たちが次々に『公共の場だぞ! マナーを守れ』『座れなかったのは別に彼女のせいじゃないだろ』などの声をあげてくれたんです。

 最初はおじさんも『そんなん知らねーよ! うるせえな』などと反発していましたが、次第に皆さんの圧にやられて口数が減っていったんですよ」

 そんな中、いつも朝から綺麗に髪を巻いている、綾香さんが心の中で“ゴージャス巻毛さん”と呼んでいた30代前半くらいの女性が口を開きました。「私知ってます! このおじさん、他の車両でも同じようなことして白い目で見られるようになって、次々と車両を変えてるんです」と大きな声で言ってくれたのです。

◆その後の“皆さん”との関係は?

「するとおじさんは、散々リセットしてきた過去の悪行をバラされたことが恥ずかしかったみたいで。急に焦って落ち着かない様子になり、次の駅で大きな舌打ちをしながら降りて行ったんですよね」

 おじさんがいなくなると車内には安堵の空気が流れて、綾香さんは全くの他人であるいつものメンツが自分を助けてくれたことに、改めてとても感激してしまったそう。

「それ以来、“いつメン”とは目が合うと笑顔で軽く会釈する仲になり……いまだにお互いのことは全く知らないけど、なんだか結束が深まったような感じです。もしまた何かあったら、今度は私がその人のを助けになりたいですね」と微笑む綾香さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

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