世界で花ひらいた女性ホースマン/島田明宏

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2026年06月04日 21:00  netkeiba

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▲作家の島田明宏さん
【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】

 この春、競馬界で世界的に女性ホースマンの活躍が目立った。

 まず、4月4日、オーストラリアのランドウィック競馬場で行われた第164回オーストラリアンダービーで、レイチェル・キング騎手が騎乗したグリーンスペーシズが優勝した。

 キング騎手は、1861年に創設されたこのレースを女性騎手として初めて制した。

「キング姐さん」が初めて来日したのは、2023年、ワールドオールスタージョッキーズにオーストラリア代表として参加したときだった。2024年に短期免許で再来日すると、チャックネイトでAJCCを勝ち、外国人女性騎手初のJRA平地重賞制覇を果たした。そして昨年、コスタノヴァでフェブラリーSを制し、JRA平地GIを勝った初めての女性騎手となった。

 5月2日には、第152回ケンタッキーダービーをゴールデンテンポが制し、管理するシェリー・デヴォー調教師は、ケンタッキーダービーを制した初めての女性調教師となった。

 1875年に創設されたケンタッキーダービーは、「スポーツで最も偉大な2分間」と言われている。

 ゴールデンテンポは23対1の伏兵で、JRAの海外馬券発売では11番人気、単勝2660円だった。日本からダノンバーボン(5着)とワンダーディーン(8着)の2頭が参戦していた。入場者は15万415人。バブル期なら、日本の競馬場でも普通に見られた数字だが、コロナ禍を経て、気がつけば日本ダービーのほうが少人数になってしまった。

 話が逸れた。

 デヴォー調教師は2018年に開業し、2023年にシーフィールズプリティでナタルマSを勝ち、G1を初制覇。同馬はその後もG1勝ちを重ね、2025年のエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれている。また、同調教師はモアザンルックスで2024年のBCマイルを勝っている。

 そして日本では、5月24日の第87回オークスで、今村聖奈騎手がジュウリョクピエロに騎乗し、JRAの女性騎手によるGI初制覇をなし遂げた。女性騎手による日本のクラシック制覇も初めてである。

 今村騎手はデビューした2022年、CBC賞をテイエムスパーダで勝って重賞初制覇を果たした。デビュー1年目のJRA所属女性騎手による重賞勝利も初めてだった。その後、騎乗停止や落馬負傷で伸び悩んだ時期もあったが、5年目の春に結果を出した。

 さらに、5月30日には、南アフリカのグレイヴィル競馬場で行われたデイリーニューズ2000で、ミカエル・ミシェル騎手が騎乗するスターメジャーが優勝。ミシェル騎手は自身初のG1制覇を遂げ、JRAの短期免許の成績要件である「当該年、または過去2年でインターナショナル・カタロギング・スタンダーズのパート1に定めるG1競走に優勝」をクリアした。

 フランス出身のミシェル騎手は2019年のワールドオールスタージョッキーズで初来日し、「美しすぎる女性騎手」などと報じられ、話題になった。南関東で短期免許を取得して騎乗した2020年には、イタリアのカルロダレッシオ賞を勝ち、重賞初制覇を果たしている。

 日本で騎乗したいという思いをたびたび口にし、JRAの通年免許試験を2022年から4年連続で受験するなどしたが、不合格になっている。

 オーストラリア、アメリカ、日本、南アフリカで、女性ホースマンが輝いた。

 短い期間にこれだけ重なったのは、単なる偶然ではないだろう。キング騎手、デヴォー調教師、今村騎手、そしてミシェル騎手のキャリアを見れば、大舞台で「初」の大仕事をやってのけたのも納得できる。それぞれ積み重ねてきたものが、同じ時期に花ひらいた。

 どの国でも、競馬は長らく男が中心となって営まれてきた。

 だから、馬主、調教師、厩舎スタッフ、騎手、生産者、メディア関係者――のそれぞれに、「初」として名を残す女性がいる。

 日本初の女性オーナーブリーダーは沖崎エイで、JRA初の女性調教師は前川恭子調教師。JRA初の女性厩務員は石倉幹子さんで、初の女性騎手は斉藤澄子、初の女性競馬記者は吉永みち子さんである。

 彼女たちの功績があったからこそ、今の女性ホースマンの活躍がある。

 今後、女性ホースマンによる「初」が増えていくことで、いつかそれが特別ではなくなる。

 女性の調教師、厩舎スタッフ、生産者、獣医師、装蹄師、エージェント、記者――が、もっと当たり前に競馬界の中心にいるようになる日も、そう遠くないのかもしれない。

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