戦時下の反省はどこへ?学術会議「国の機関」から「特殊法人」へ 菅政権の“任命拒否”から続く政府介入の危機【サンデーモーニング】

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2025年05月18日 15:22  TBS NEWS DIG

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日本の科学者たちを代表する組織が大きく変わるかもしれません。5月13日、日本学術会議に関する新たな法案が衆議院を通過しました。

【写真で見る】菅政権が任命拒否した、6人の候補

「国の特別機関」から「特殊法人」に 政府の管理が強まる懸念も

「全科学者を戦闘配置」− 戦争さなかの1943年11月26日、朝日新聞1面を飾った見出しです。

先の大戦で、戦争への協力を余儀なくされた日本の学術界。 その反省の上に作られた組織が今、大きく揺らいでいます。

デモの参加者(8日)
「学問の自由を守れ」

今、国会で審議されている日本学術会議の改正法案。連日、国会周辺では抗議行動が行われています。

東京大学 佐藤学 名誉教授
「皆さん、この悪法を必ず廃案にしましょう。学術会議法案は日本学術会議の解体です」

今回の法案では、学術会議を現行の「国の特別機関」から「特殊法人」に移行。

総理が任命する「監事」や「評価委員」が置かれることから、政府による管理が強まるのでは、という懸念の声が上がったのです。

全労連 秋山正臣 議長
「結局、国の言うがままに動かざるを得ない」

「法律改正が必要だという理屈を強引につけてしまった」 菅政権時に6人の任命を拒否

事の発端は、5年前です。

菅義偉 総理(2020年10月)
「日本学術会議は政府の機関であり、任命される会員は公務員の立場になること。こうしたことを考えて、推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか、考えてきた」

それまで政府は、「政府が行うのは形式的任命」と明言し、学術会議側が推薦した人をそのまま会員としていました。

ところが当時の菅政権は、学術会議が推薦した新会員候補のうち、6人の任命を拒否。

その中には、安保関連法などに反対した学者らが含まれていました。

政府は、任命拒否の理由を明らかにしないまま、学術会議のあり方を変える議論を開始。今回、学術会議を法人化する法案を提出してきたのです。

日本学術会議会長を務めた大西隆さんは…

東京大学 大西隆 名誉教授
「菅元総理が任命拒否をした。簡単に言えば、総理の間違いを取り繕うために、むしろ学術会議に何か問題があるから、法律改正が必要だという理屈を強引につけてしまった」

一方で政府は、今回の法案は、学術会議の独立性を今以上に高めるものだと主張しています。

坂井学 内閣府特命担当大臣(4月18日)
「その機能強化に向けて、独立性、自律性を抜本的に高めることを目的としており、それにふさわしい組織形態として、学術会議を法人化するものであります」

そして5月13日、法案は賛成多数で衆議院を通過したのです。

“反戦”と学術会議の歴史…安倍政権下で変化

組織の改変に向けた議論が続く学術会議。一方で戦後80年、学術会議の歴史は“反戦”とともにありました。

1920年、日本学術会議の前身である「学術研究会議」が設置されます。やがて戦争が激しさを増す中、学術研究会議は変容を迫られます。

東京大学大学院 隠岐さや香 教授
「戦時中の1943年頃に、会員任命が政府の直接の任命になると、完全に人事権が奪われる。そして、軍事研究のコーディネートをするような機関になりました」

結果として、戦争に奉仕する形となった反省から、戦後の1948年、学術研究会議は廃止。新たに1949年、日本学術会議が設立されました。

1950年には、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」とする声明を発表。さらにベトナム戦争が泥沼化し、東西冷戦が激しさを増す1967年にも同様の声明を発表します。

しかし、こうした戦争とは距離を置く姿勢に、安倍政権下で変化が訪れます。

2015年、防衛装備庁による、軍事技術に応用可能な研究を助成する制度がスタート。これに科学者らから反発の声が出ました。

名古屋大学 池内了 名誉教授(2017年)
「各大学、研究機関に応募しないよう求める。(軍事研究に)大量の資金が大学や研究機関に流れ込んできたときに、はたして研究の自由や大学の自治が担保されるのでしょうか」

学術会議は2017年、声明で「政府による研究への介入が著しく問題が多い」などと懸念を表明します。

一方で2022年、「軍民両用の研究と、そうでないものとに単純に二分することはもはや困難」とし、軍事・民間双方で活用できる先端技術研究については、実質認める見解を出しています

そうした変化の中、今回の法改正で、学術会議の独立性が大きく損なわれるのでは、と大西さんは懸念します。

東京大学 大西隆 名誉教授
「学術会議には、(本来)学術会議として学術の観点から自由に見解を出してもらって、それを社会が、政治がどう受け止めるのか、というのもそれぞれの判断が別にある。

やるべきことは法改正よりも、色々パイプを作って、意思の疎通をもっとスムーズにやっていくことが重要なのではないか。

法律の中身は、その独立性が非常に危うくなるとか、先進国のアカデミーとしてはあまりふさわしくない形態にしようとしている」

独立性を巡って、注目が集まる日本学術会議。その有り様は今後、変わっていくのでしょうか。

このニュースに関するつぶやき

  • 今や日本が滅ぶ方向での提言しか出来なくなっている学術会議が「戦時下の反省」なんて言っても説得力が無いんだよ。科学技術は軍事と親和性が高いからね。
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