「稼ぎたいなら歯科医になれ」平均年収は3000万円、“看板の院長”が歯学部を激推しする理由

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2025年09月07日 13:00  週刊女性PRIME

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都内近郊の至るところに設置されている『きぬた歯科』の看板

 かつて頭の悪い者と容姿の悪い者こそ「東大に行け!」と強い言葉で説いた人気漫画・ドラマがあった。さすればそんな人でも稼げるようになる、と──。

「今はそういう人こそ歯学科に行け、歯医者になれ、と言いたいですね。医師よりも稼げるので」

 そう話すのは、きぬた歯科院長のきぬた泰和氏。主に“インプラント”という文字と自身の“顔” がどデカく掲げられた看板で知られる歯科医師だ。

コンビニより多い歯科医院

 統計によると“コンビニより多い”歯科医院だが、'24年の倒産・廃業件数は過去最多。続く'25年上半期はそれを超えるペースという信用調査会社の発表もあり、“斜陽産業”だと報じるメディアも。そんな状況下にあって、なぜ東大ではなく歯科医(歯科大学)をすすめるのか。

「ビジネス視点で客観的に見たときに、歯医者が良いなという時代が来たということです。自分の儲けのために自分たちの業界が盛り上がっていることをSNSで喧伝する人もいますが、自分はもう“逃げ切った”立場で、今日仕事を辞めたっていいくらい。

 別に今後の歯科医師業界がどうなろうと知ったことではないですが、客観的に見て良くなっているので。Xなどでこういうことを言うと“歯科医の地位向上のためにやってくれている”とか言ってくれる人がいますが、そういうことでは全然ない。でもオススメしますよ(笑)

歯科医の未来はなぜ明るい?

「今から30年以上前、僕が歯医者になったころは同業者が多く、食えない歯医者もいた。まず、当時は治療のオプションがなかった。例えばインプラントも一般化していなかったし、定期的なメンテナンスなどの予防の概念もあまりなかったし、マウスピース矯正もなかった。あったのは差し歯、金属の入れ歯、歯列矯正程度。逆に今の歯医者の良さはここで、自由診療のメニューが多い。かつ保険診療もできます」

 自由診療の種類が多く、ゆえに(医師より)稼ぎやすい。

「僕が歯医者になった当時は歯医者を増やしていた時代。人口に対して歯医者の数が異常に多かった。一般に昔から2000人あたり1医院が適正と言われているんですが、それが2医院とか3医院と過多だった時代があったんですね。国がそれをマズいなと思ったのか、'06年に歯科医師国家試験の合格率が急激に下がった。それまでは80〜90%だったのが、いきなり60〜70%程度になった。歯医者の数を絞っていったということです」

 歯科医の数を減らした結果、起こったことは……。

「そうなると私立の歯学部は歯科医師国家試験の合格率を上げるのに躍起になった。出来の悪い学生をどんどん留年させて、成績の良い学生だけを国家試験を受けさせるようにした。それは“留年商法”として週刊誌などでも報じられ、合格率の低さもあり、歯学部に人が集まらなくなった。これは今も続いています」

 若者が歯科医を目指さないようになり、歯科医の数は減っていった。

「一方ですでに歯医者になっている人たちはどんどん高齢化している。歯医者のボリュームゾーンは60歳から69歳がいちばん多くて、歯科医全体の24%くらい。50代から上の世代で全体の6割を占めている。そして彼らはこれからどんどん引退していくわけですが、歯医者になろうとする人の数は少ない状況です」

 しかしながら、歯科医が勤務する“場所”は多い。

「 “分院”を出すところが増えて、歯科医院は多くなっている。医療法人◯◯会が何軒もクリニックを持っているとか、そういう歯科医院が増えています。そのため求人が増えていますが、人がいない。需給バランスが崩れているのです。歯科医院による歯医者の“奪い合い”が始まっている。どうするかというと、“金”で釣るしかない」

きぬた氏の初任給は……

 ちなみにきぬた氏が歯科医になった当時、初任給は25万円だったという。

「それでも良かったほう。15万円とか20万円という求人もありましたから。今は初任給が50万円でも来ないですから。まだ右も左もわからない歯医者に50万円払うんですよ。削る機械を握ったこともない人が年収600万円。だけどそれでも来ない。少なくとも60万円あげないと新卒の歯医者は来ないんですよ。いや、60万円でも来にくいか。初任給100万円で呼ぶ歯科医院もザラにありますから」

 県内に歯科医が少ない静岡県は、その数を増やそうと、県が全国の歯科医と県内の医療機関をつなぐ“マッチングサイト”を'25年4月よりスタートさせている。

歯医者が大変で食えなかった時代から比べて考えられないことです。それでまたマズいと思ったのか、今年発表された歯科医師国家試験の合格率が上がりました。60%台が続いていたところいきなり70%に。今後、厚労省は歯医者を増やす方向に転じると思います。でもそれは手遅れで、国は来年の合格率をさらに上げていきなり80%にはできない。徐々に上げていくしかなく、80%などにできるのは10年後とかでしょう。でもそのころには今のご老人の歯医者は引退したり、亡くなったりしているでしょうから歯医者は足りなくなる」

 最新の年収ランキングにおいて、歯科医は医師に次いで3位(令和5年分の国税庁『民間給与実態統計調査』より。1位は航空操縦士で月額126万円)。これまでベスト3などには入っていなかったが……。

「歯医者は医師を数年で抜くと思っています。今、医師の国家試験合格率は90%を超えています。どんどん医師の数を増やしている。実際、地方を中心に医師は足りていないと聞きます。だから増やしている。ところが、構造的な問題として医師は保険診療しかできません。“◯◯先生は腕が良いから自費です”というのはできない。だから給料を上げたくても上げられない。自由診療が主な美容外科は別として」

 前出のとおり歯科医は自由診療の種類が医師より多い。

「歯科医の年収は上がっていることは事実としてある。これから“安牌”として生きていくなら、歯科開業医でなくとも、歯科勤務医もありだと思います。求人の金額がめちゃくちゃ上がっているのでリスクなくいける。ものすごく簡単に伝えると“人が少ないから、あなたは稼げるよ”ということです(笑)」

 医療系大学は、その学費の高さがネックになるが……。

「今、私立の歯学部は入学金と授業料合わせて2000万円を切っているところもあります。投資として絶対にアリだし、銀行などから貸してもらえるなら絶対行ったほうがいいし、行かせたほうがいい。オッサン歯医者の予想ですけど、今後10年いや20年、厚労省が歯科医師国家試験の合格率を下げることはない。今の70%からさらに上がって90%くらいまでいくはず。そういう意味でも安心だと思う。なにしろ高齢者が増えすぎちゃって足りない。今後はさらに足りなくなるので」

 今から“稼げる”チャンスになりつつあり、ここからある程度はチャンスが続く?

「全体の歯医者の数を増やした結果、供給が多くなったら当然、一部の歯医者は難しい状況になるでしょう。しかし、今後20年は見通せますので、その間に自分なりの“何か”を見つけてくださいって感じですね。“看板”でもなんでもいいんで(笑)」

 顔を全面に晒した看板になるのはさすがに抵抗があるかもしれないが、これから将来を見据える若者やその親は、歯科医になるのを検討するのもアリ?

声を大にして若い人に言いたいんですけど、ドラマなどで医者が主人公になることはいっぱいあります。しかし歯医者はまったく題材にならない。ドラマの歯科医なんて何十年も前の福山雅治くらい。それもギャグみたいなキャラだった。医者にはカッコいいイメージがあるかもしれないですが、歯医者にはない。

 でもそういうことに惑わされないでほしい。若いころは金ではないステータスややりがいを考えちゃうかもしれない。でも日本なんて東大に行こうが医者になろうが何になろうが、ただのオジサン、オバサンになるだけ。誰もイーロン・マスクとかビル・ゲイツになれない国だから。イノベーションなんて起こせない国だから。だからそんなくだらない小さいことに惑わされずに、ラクしてやれることをやろうよと。だから歯学部オススメですよ

 ちなみにきぬた歯科勤務の歯科医師の'24年の平均年収は3000万円近いという。

このニュースに関するつぶやき

  • そうか?ずいぶん潰れてるようだが。
    • イイネ!5
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