
SNSに投稿されている作品『セカンド・カミング』は男子中学生の駅伝を題材にしたスポーツ漫画。絶対的エースと称される鈴賀に代わってアンカーを務めることとなったのは、彼の友人であり、本作の主人公でもある男子生徒・徳弘であった。
そんな徳弘は自身が出走する駅伝を「今日は『俺のレース』じゃない/『鈴賀のレース』なんや」と表現する。なぜ徳弘が代わりの選手として選ばれたのか、本作のタイトルが意味するものとはーー。
『セカンド・カミング』の作者・なかのさんは学校の先生を務めながら漫画制作を続けている作家だ。なかのさんにとって、本作はこれまでの創作活動の中でもとくに印象的な作品であるという。登場人物の詳細や制作の裏話について、話を聞いた。(あんどうまこと)
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
|
|
|
|
なかの:鈴賀と徳弘のような関係の生徒を目にしていたことから本作は生まれました。ランナーである2人は仲が良いけれど、1人は周りから特別扱いされるほど優秀な成績を収める子。もう1人は決して走れないわけではないけれど、自分なりの目標を持って一生懸命やっている子でした。後者である彼が「友だちのことをどう思って一緒に走っているのかな」とふと思ったのが創作のきっかけです。
ーー本作の主人公・徳弘を描くなかで意識したことは?
なかの:徳弘のモデルになった子は「自分は自分」として目標を持って走っていたのですが、徳弘自身はどこか「越えられないな」と諦めていたり、冷めていたりする子にしようと思いました。
表情があまり柔らかくない、笑っていても引きつっているようなキャラクターにすることで、終盤に「自分の足で走るぞ」と決心し変わっていく姿が引き立つのではないかと考えました。
ーー表情が固く、自分の感情をうまく表現できない様子は、リアルな中学生像であると感じました。
|
|
|
|
なかの:中学生や高校生って自分がどうしたいかを言語化できないことが多く、自身の思いを素直に表現できない不器用さがあると思うんです。そういう子がもがいている姿を漫画で描くのは面白いですね。
徳弘は感情を表に出さないキャラクターですが、最後に彼が泣くシーンはすごく力を込めて描きました。鈴賀と一緒に走れないという現実と向き合ったときの寂しさを画にどう込めるかと考えながら、かなり時間をかけて描いたシーンとなりました。
ーー徳弘に加えて鈴賀を描くなかで意識したことは?
なかの:鈴賀はトップでいることの孤独を表現したいと思っていました。ただ本作が完成したあとに振り返ると、彼はすごくいいキャラクターになったなぁと感じます。
鈴賀が亡くなったあと、彼が徳弘を煽ったり挑発的に接したりするシーンがありますが、ただ意地悪をしているのではなく、徳弘の闘争心や情熱を復活させるためにわざと煽っている。鈴賀はストレートに「ああしろ、こうしろ」と言うタイプではないと思ったので、あえてふざけた言い回しをしたり、少しひねくれた形で寄り添ったりするのかなと考えながら彼を描きました。
|
|
|
|
ーー登場人物が着用するシューズや「都大路」といった固有名詞など、駅伝に関する描写の解像度が非常に高いと感じました。
なかの:私はスポーツを全くやらないので、わからないなりに下調べをしました。生徒たちと会話をしていると「あのシューズがいい」というこだわりをよく耳にしていたので、それぞれのキャラクターたちが履きそうなシューズを選んでアレンジしました。また陸上競技のコーチを務められている先生にも話を聞きましたね。
スポーツを題材にした漫画は経験者の方が読むことが多いと思います。その道に詳しい読者の方からすると違和感があるかもしれませんが、あまり気にならない程度の描写になることを目指し、駅伝についてたくさん調べながら制作しました。
ーー本作が投稿されたSNSでは作品と共に「どうしても描きたくて描いた」という言葉が添えられていました。
なかの:正直、ここ数年で描いてきた作品は、どこか「自分らしくないな」と感じていた時期があったんです。でも、このお話を組み立てたときに「これは自分も熱くなれる話だ」と思えました。
本作を描いて、やっぱり「人間を描く」っていいなと改めて思いました。本作をつくり上げるなかで「徳弘ならどんな表情をするかな」とか「鈴賀ならどんな行動をするかな」と考えながら制作することができたからです。
本作は構想し始めたときから執筆まで6か月以上あたためた作品であり「とにかく自分が夢中になって描ける、読んだ人もきっと熱くなれるだろう」という強い自信を持って描けた漫画です。制作の過程で苦しいこともたくさんありましたが、本作を完成させることができてよかったです。
ーー今後の目標を教えてください。
なかの:今後も登場するキャラクターときちんと向き合って、漫画を通じて人間を描けるようになりたいです。徳弘や鈴賀をはじめ、本作に登場するキャラクターたちはとても気に入っているので、いつかスピンオフのような形で本作に関する作品を描けたらいいなと思っています。
(文・取材=あんどうまこと)
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。