なぜ調理家電の「試食」ができる店が増えているのか ビックカメラや象印が仕掛ける背景

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2026年05月20日 05:40  ITmedia ビジネスオンライン

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試食堂の狙いは?

 近年、家電量販店において店頭の炊飯器やトースターを実際に試して、ご飯やパンを試食できる常設コーナーの展開が相次いでいる。加えて家電メーカーでも、自社製品を実際に試せる飲食店や体験拠点を展開するなど、消費者との新たな接点づくりを進めている。


【画像】ビックカメラ池袋西口IT tower店の「試食堂」


 ビックカメラは3月にオープンした「ビックカメラ池袋西口IT tower店」(東京都豊島区)にて、トースターや炊飯器、コーヒーメーカーなどを体験できる常設キッチン「試食堂」を導入。製品ごとに、ご飯やトーストの食べ比べができるようにした。


 ヤマダデンキも2025年9月にリニューアルした「LABI池袋本店」(東京都豊島区)で、調理家電を体験できる実演スペースを新設した。


 象印マホービンが展開するレストラン「象印食堂」では、同社の10万円を超える高級炊飯ジャーで炊いたご飯を食べ比べできる。キッチン用品ブランド「バーミキュラ」を展開している愛知ドビー(名古屋市)もレストランやベーカリーを展開し、自社製品で調理したメニューを提供している。


 なぜ今、調理家電やキッチン用品を「試せる場」が増えているのか。


●「試食」で購入を後押し


 ビックカメラ池袋西口IT tower店では、店内にキッチンスペース「試食堂」を設けた。カウンターの内側にはエプロン姿の従業員がおり、水道や調理器具を備えたスペースで実際に調理を行う。調理方法や食べ方の提案もしながら、製品の使い勝手や味の違いを体感してもらう狙いだ。


 同店舗の小野雅彦店長は「実際に試したいという声が多くあった。ビックカメラでは以前から体験・体感を重視してきたが、実際に試食できる店舗は初めて。実際に食べていただいて、納得して買っていただきたい」と説明する。食品を扱うため、保健所に届け出た上で常設コーナーとして運営している。


 日替わりや時間帯ごとに、さまざまな調理家電を実際に試せる。試飲・試食は無料で利用できる一方、ソフトクリーム(150円)やワインサーバー(500円)といった有料サービスも用意した。


 メーカーと連携したイベントも開催している。たこ焼き器を使った試食イベントでは、家族連れを中心に多くの来店客が集まった。利用客は若年層から地域の高齢者まで幅広く、特に週末はにぎわっているという。


●「おいしさ」は数字で比較しにくい


 特に試食を重視しているのが、高価格帯の調理家電だ。物価高の中でも「良いものにはお金を払いたい」というニーズがあるという。


 炊飯器やトースター、コーヒーメーカーなどは、スペックだけでは違いが分かりにくい。PCや冷蔵庫なら性能を数値で比較しやすいが、「おいしさ」は数字では表現しづらいためだ。


 例えば炊飯器は、1万円前後の製品から10万円を超える高級モデルまで幅広い。「もっちり炊ける」「甘みが出る」といった説明はあるものの、同価格帯の商品同士では違いが伝わりにくい。10万円前後の炊飯器が並んでいる場合、どちらを選んでもおいしいご飯は炊けるだろう。ただ、どちらが自分の好みに合うかは、実際に食べてみないと分からない。


 また、トースターについては「どんな機能があるのか知らない」という利用客が多いという。実際に試してもらうことで機能や違いを伝えている。


 来店客の滞在時間を延ばす効果もある。小野氏は「通常の店舗と比べて、悩んだり比較検討していただいて滞在時間が長くなっている印象がある。試食などを実施した商品はよく売れていて、納得して買っていただいている手応えを感じている。価格だけなら、ネット通販や他の家電量販店でも比較できる。実際に試せるのはリアル店舗の強みだ」と語った。


●「食べ比べ」できる店は、家電量販店以外にも


 調理家電を実際に試せる場は、家電量販店以外にも広がっている。


 象印マホービンは2018年、「ご飯」をコンセプトにしたレストラン「象印食堂」をオープンした。現在大阪や東京で3店舗を運営している。同社が展開する約17万円の最高級圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊いたご飯と、家庭料理を組み合わせたセットメニューを提供している。価格帯は2000〜6000円程度だ。


 店頭では、粘りの強さによって炊き分けた「白米」が2種類と、玄米などの「健康応援米」1種類が並ぶ。ご飯はおかわり自由で、食べ比べできる。おかずはあえて高級食材を使わず、家庭でもイメージしやすいメニューで、ご飯そのもののおいしさを体験できるようにしているという。


 店内では、タンブラーやごますり器など炊飯器以外の商品も使用しており、ブランド全体を体験できる場として運営している。


●象印食堂の狙いは?


 象印マホービンの広報担当者は「『炎舞炊き』の価格帯は10万円を超えるため、お客さまにとって即決できる商品ではないと考えている。ご飯単体ではなく、おかずと一緒に食べてこそ家庭で『炎舞炊き』がある暮らしをリアルに想像していただけると考え、レストランという形態をとった」と説明した。


 実際に「食堂で食べておいしかったから購入した」といった声もあるという。


 象印食堂では、「炎舞炊き」の購入を検討する客が、最終的な判断材料として味を確かめに来店するケースも少なくない。担当者は「調理家電の性能は、実際に食べていただかなければ伝わらない」と説明する。


 特に高価格帯の商品を検討する層ほど「家族に少しでもおいしいものを食べさせたい」という思いが強く、購入に慎重になる傾向があるという。そのため店頭では、スタッフがご飯や商品の知識を正しく伝えられるよう、自発的に学び続けられる体制を整えている。


 一方、来店客は購入検討者だけではない。「おいしいご飯を食べられるレストラン」として日常のランチや特別な食事の場として利用する人も非常に多いという。すでに「炎舞炊き」を使っているユーザーが訪れるケースもある。


 来店客は40〜50代の女性を中心に、友人同士での来店が多い。担当者は「落ち着いた雰囲気の中で、日常の中の少しぜいたくを求める層に広く支持されている」とした。


 象印マホービンは、2026年からの3年間で象印食堂を10店舗まで拡大し、売上高10億円規模を目指す。飲食事業を新たな収益の柱の一つに育てる方針だ。


 調理家電の売り方は価格や機能を訴求するだけでなく、実際に味わいながら魅力を感じてもらう「体験型」にシフトしつつあるようだ。



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