“遺族と加害者の30年”オウム真理教の元幹部から届いた「約30通の手紙」と交わした「約束」 仮谷清志さん拉致監禁事件【news23】

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2025年03月21日 01:36  TBS NEWS DIG

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“遺族と加害者の30年”「約30通の手紙」と交わした「約束」

1995年3月20日に起きた「地下鉄サリン事件」の直前、オウム真理教に拉致され、命を奪われた男性がいます。遺族である男性の長男は怒りを抱きながらも、「加害者」である元教団幹部と長年やりとりを続けてきました。そこには、今は刑期を終えた元幹部と交わした「ある約束」がありました。

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「謂われ無き形で一家の大黒柱を奪ってしまった、己の罪の重さに御詫びの言葉もありません」

これは、オウム真理教の元幹部が、ある事件の遺族に宛てた手紙です。

「目黒公証役場」で事務長を務めていた仮谷清志さん(当時68)。30年前の1995年2月、教団の信者によって連れ去られました。

教団から脱会しようと、身を隠した仮谷さんの妹の居場所を聞き出すための犯行で、仮谷さんは監禁先の山梨県内の教団施設で死亡しました。遺体は灰になるまで焼かれ、山梨県の湖に遺棄されました。

手紙の主は、この事件で運転役として関与した平田信元幹部。仮谷さんの遺族に、何通もの手紙を送っていました。

手紙を受け取った仮谷さんの長男・実さん(65)。30年目の命日のこの日も、仮谷さんが好きだったコーヒーを供えます。

仮谷実さん
「(清志さんの)灰を捨てたという場所を案内してもらいまして、そこにある小石を拾ってきて、父の遺灰というんですか、それが付着しているのではないかという思いで拾って、それを骨壺に収めています。もしかすると、本当に死んでいないのかな。まだどこかに生きているんじゃないかという気持ちは残っているんですよね」

教団は、仮谷さんの事件から3週間後の3月20日、6000人以上が死傷した「地下鉄サリン事件」を起こします。一連の事件で、教祖・松本智津夫元死刑囚ら幹部が逮捕・起訴されますが、平田元幹部は逃亡を続けていました。

事態が動いたのは、事件から16年後、2011年の大晦日、突如、平田元幹部が出頭したのです。

父の死に関わった人物との“約束”

平田信 元幹部
「事件から時間が経ったので、一区切り付けたかった」

平田元幹部が仮谷さんに初めて手紙が書いたのは、出頭直後の2012年1月。

「謝罪をするのがこんなにも遅れたことから先ず、お詫び申し上げます」

その後、開かれた法廷での態度について、実さんは「他の教団幹部とは違った」といいます。

仮谷実さん
「彼が法廷に入ってきたときは、目を合わせて礼をし、頭を下げるというのを最初から最後までやっていました。他の人たち(幹部ら)からは一切ないです」

ほかの教団幹部が事件について詳細を語らないなか、裁判が行われている最中に届いた手紙には、事件についての説明がありました。

「この事件は御存知の通り、教祖という狂者と、その狂者を崇めてしまった愚者共とがマッチしてしまった極めて理解し難い構図によって成り立っています。私を含めて十数人で假谷様を殺したとのお考えに、私に反論はありません」

手紙には事件への後悔も多く綴られています。

「『休日には競馬を一緒に楽しんだ』というエピソードに触れる度に、生活の息遣いや幸せが感じられ、己の愚行を心より後悔しております。申し訳ありませんでした」

仮谷さんの命日である3月1日に書かれた手紙には…

「この日はコーヒーを供養させて頂きました。さすがにドリップコーヒーとはいきませんし、チーズケーキも用意は出来ませんが、今年は私なりに何か形のある行為をしたかったのです」

仮谷実さん
「彼が父の命日を覚えていたということと、父が好きなコーヒーとチーズケーキというのを彼は覚えている。これはちょっと本気かなと」

謝罪を「本気だ」と感じた実さんは、判決前、平田元幹部とある「約束」を交わすことにします。

仮谷実さん
「出所後、半年過ぎてから、毎月5万円ずつ(支払う)という約束。少なくとも10年間は毎月、自分の犯した罪に対して、父にわびるという場面がセッティングされるはずだと」

事件と向き合い続けてもらうため、賠償金として出所後に10年間かけて、毎月5万円を払ってもらうことにしたのです。しかし、その後に出た判決は予想よりも長い「懲役9年」。刑務所に収監される直前の手紙にも、謝罪の言葉を綴っています。

「どこに行こうとも供養の気持ちを忘れることなく、胸に刻み続けることをお約束いたします」

「今でも許すことはできない」平田元幹部と遺族の“今の関係”

2018年7月には、松本元死刑囚ら13人の死刑が執行され、事件は大きな区切りを迎えました。首謀者の松本元死刑囚は一連の事件について、何一つ、語ることはありませんでした。

その4年後の2022年、実さんのもとに、刑務所にいる平田元幹部から再び手紙が届きます。

「4月25日を以って刑期は満了となりますが、予想していた通り『罪を償った』という実感は湧いてきません。今の段階では釈放の開放感も感じられません」

出所後に平田元幹部と面会を重ねた実さんは「謝罪し続けている」と感じ、賠償額を大幅に減らすことにしたのです。

仮谷実さん
「9年、刑務所に拘束されたというのがあると。ただ、その間も謝罪の気持ちを持っている。ある意味、もう、ほぼほぼ当初の約束の10年になる。お金の問題じゃない、気持ちの問題だと」

毎月5万円と考えていた出所後の賠償額を毎月1万円とし、2年間、支払わせることで全てを終わらせることにしたのです。振り込みは欠かさず続き、先月、ついに…

仮谷実さん
「最後の2月1日。しっかり毎月。今回、ここで、約束した24回が終わったということは、彼の誠意というのが受け止められる。彼がやはり、父に対して謝罪をずっと続けてきたと」

30通近くに上る謝罪の手紙を出し、約束を果たした平田元幹部。実さんは今後、関わることはないとしたうえで、「今でも許すことはできない」と話します。

仮谷実さん
「約束を守ったとしても、彼は父の死に関わった人間なんです。だから、私たち被害者から見れば加害者であって、この関係は変わらない。許せないですよね、父が戻ってくるわけじゃないから。彼に限らず、父の死に関わった全員は許すことができない」

このニュースに関するつぶやき

  • 凶悪犯でオウム真理教信者の平田信を、賛美・擁護するTBSの不可解な記事。自己満足の謝罪なのに、共感を得させようとするTBSの記事操作が下劣だ。
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