インフルエンサーがリポストした投稿は、その後さらにリポストされやすくなる――朝日新聞社と北陸先端科学技術大学院大学、筑波大学は5月14日、SNS上で働く「名声バイアス(Prestige Bias)」の影響を定量的に示した研究成果を共同で発表した。
【画像はこちら】「ポストの拡散過程」を再現して検証……インフルエンサーの影響力は? 論文から引用(計2枚)
名声バイアスとは、名声がある人物の情報を、人々が優先的に学び、共有する傾向のこと。文化進化論において知られている概念だが、研究ではこれがデジタル空間でも同様に作用するのか検証した。インフルエンサーが自ら作成した投稿ではなく「他人の投稿をリポストした場合」にもその影響が及ぶのかは、これまで明らかでなかったという。
研究ではX上の日本語ポスト約5882万件、リポスト約5億2004万件、1491万人のユーザーを解析。投稿をリポストされた数に基づいて算出した指標「hg指数」の上位1%をインフルエンサーと定義し、その行動が情報拡散に与える影響を調べた。
特定のユーザーによるリポストが、誰に閲覧・拡散されたのかを追跡するために、調査対象のリポストとユーザーのフォロー関係から仮想的なタイムラインを構築。ポストの拡散過程(リポストカスケード)を再現した。こうして、インフルエンサーと一般ユーザーがリポストした場合に、それぞれどれだけ多く、連鎖的に再拡散が起きるかを比較した。
|
|
その結果、インフルエンサーによるリポストは、幅広い条件下で、一般ユーザーよりも再リポストされる確率が高かった。さらに、リポスト全体の約53%および、二次拡散(再リポスト)に起因する閲覧数の約58%は、全ユーザーの1%に満たないインフルエンサーが起点となったものだったという。
「投稿の内容」「受け手の嗜好」などをランダムな要素として考慮した「混合効果ロジスティック回帰」による分析でも、インフルエンサーのリポストは有意に高い拡散効果を示していた。研究チームは、「インフルエンサーがリポストしたこと」自体に、情報の連鎖的拡散を加速させる効果があると結論づけている。
研究チームはこの成果について、インフルエンサーを活用した効果的な情報発信や、誤情報の訂正を効率的に拡散する手法の設計に活用できる可能性があるとみている。今後は、誤情報や専門性の高い情報など「コンテンツの質」と名声バイアスの相互作用についても評価を進める方針。言語・文化圏を超えた一般化の検証や、Xのタイムライン表示アルゴリズムの影響を切り分けるための手法開発も今後の課題としている。
責任著者の新妻巧朗さん(朝日新聞社メディア研究開発センター)は、「人は発言の内容だけでなく、誰が言ったかにも左右される。本研究はその傾向が『誰が拡散したか』にも及ぶことを示した。インフルエンサーに対する意識次第で、情報環境は良くも悪くも大きく変わる」とコメントした。
論文は1日付で英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
楽天モバイル 四半期黒字を達成(写真:ITmedia NEWS)8
goo辞書 6月25日にサービス終了(写真:ITmedia NEWS)18