なぜASUSはユニークなモデルを出し続けるのか? 「今後も果敢なチャレンジは続けていく」と語る同社幹部に聞く

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2025年06月19日 12:11  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

お話を伺ったASUSの幹部メンバー

 日本でASUS JAPANを展開するASUSTeK Computer(ASUS)は、「COMPUTEX TAIPEI 2025」の期間中に台北の本社でイベントを開催したが、その際に日本メディアが経営幹部にグループインタビューする機会を得られた。


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 ここではAI PCへの取り組みや、日本市場におけるASUS JAPANの製品展開などについて興味深い話を聞くことができたので、その内容をお届けする。


●シェア獲得のため新しいセグメントへ積極的に切り込む


―― PCのプロセッサベンダーとして、IntelやAMDに続きQualcommが加わりました。御社としてはこの3社をどのようなバランスで、どのように使い分けていくと考えているのでしょうか。


ピーター・チャン それぞれのベンダー、プロセッサの強みがあります。我々はトータルソリューションプロバイダーを目指しています。ユーザーにとってのメリットを考えて製品を企画し、そのコンセプトにあったプロセッサを選択し、提供していきます。


 例えば、日本市場向けに開発した「Zenbook SORA」では、電力効率に優れ、薄型軽量のPCを設計しやすいQualcommのSnapdragon X Elite/Snapdragon X Plusを選択しました。


 一方、ゲーミング向け製品では、QualcommのArmアーキテクチャよりも、x86/x64アーキテクチャにアドバンテージがあると考えており、IntelおよびAMDのプロセッサを採用しています。


―― 日本のPC市場で上位シェアのベンダーの壁が厚い状況が続いていますが、ASUS JAPANがこれまで以上に存在感を示すために考えていることはありますか。


ピーター・チャン 我々がすべきことは2つあると考えています。1つは、日本市場をより深く理解することです。日本市場向けに開発したZenbook SORAでは、日本の生活習慣、通勤事情などを知ることから始めて、日本の会社員や学生が何を好み、何を求めているか、それに合わせて設計を行うことで一定の成果を挙げることができました。


 もう1つは、新しいセグメントへの積極参入です。例を挙げると、2024年から登場したCopilot+ PCです。この市場では我々がトップのシェアを獲得しています。これからもこういった新しいセグメントが出来るようなことがあれば戦略的に積極参入し、そこで実績を挙げながら、長期的にはメインストリームの市場においてもシェアを獲得したいと考えています。


アルヴィン・チェン ASUS JAPANでは、ここ数年、日本のユーザーをより深く理解するため、リサーチを続けています。ゲーミング製品、AI PC、Copilot+ PCなどジャンルを問わず、日本のユーザーが何を求めているのかというところを調査し、製品に反映していく取り組みを進めているところです。


―― 近年の日本市場は経済が低迷し、コンシューマーユーザーの購買力は低下していると感じます。現在の日本市場をどう捉えていますか。10年前と傾向や戦略が変わっているということはあるのでしょうか。


ピーター・チャン 10年前も今も、日本市場は我々が注力している市場の1つであることは変わっていません。その時代に合わせて、日本市場で受け入れられる製品を売っていきたいと考えています。10年前ではスマートフォンの「ZenFone(現Zenfone)」や「ROG Fone」、タブレットの需要があり積極的に展開しました。現在はコンシューマ向けのノートPC、GIGAスクール構想のChromebookといったものが中心になっています。


―― 御社はコンシューマ向けのノートPCとして「Zenbook」「Vivobook」「ROG」「TUF」などのブランドを展開していますが、その中で今一番売れているブランドはどれでしょうか。


ピーター・チャン 数量ベースでいえば、Vivobookが最も多く販売されています。我々のメインストリームブランドであり、市場規模も大きく、買いやすい価格で展開していることが理由です。当社の製品には優位性があると自負していますので、今後は高付加価値のZenbookシリーズやROGシリーズも訴求していきたいと考えています。


●AI活用はまだスタート地点 ソリューション提案がカギ


―― AIをどのようにビジネスチャンスとして生かそうと考えていますか。また、どのように活用していこうとしていますか。


ピーター・チャン この2年、我々は既存デバイスへのAIのインテグレートを進めてきました。Copilot+ PCの要件を満たすPCや、GeForce RTX 50シリーズのGPUを搭載するPCを投入すると共に、AIノイズキャンセリング機能、「StoryCube」や「MuseTree」などのオリジナルのソフトウェアも導入してきました。


 さらに、この春はRyzen AI Max+ 395を搭載するPC(ROG Flow Z13 GZ302)をいち早く市場へ投入しました。(Ryzen AI Max+ 395の内蔵GPUが大容量のユニファイドメモリを利用できるため)大規模なパラメーターを備えたデータ容量のLLMを(インターネット上のサーバーではなく)PC単体で動作させることが可能になりました。これからハードウェアはさらにパワフルになり、より多くのことができるようになっていくでしょう。


―― Copilot+ PCに関して、ユーザーの傾向などがあれば教えてください。


ピーター・チャン Copilot+ PCに関しては、現時点では新しいテクノロジー、AIに強い関心があるアーリーアダプターの方が中心です。この10月にはWindows 10のサービス終了が控えており、PCのリプレースのタイミングで導入が進むことを期待しています。


―― Copilot+ PCの中で売上げが好調なモデルはありますか。


デビッド・チュー ずばり、Zenbook SORAです。こちらのモデルは日本市場向けに開発したモデルですが、とてもポジティブな反響をいただいています。ユーザーの50%以上は10代〜20代の学生や若い会社員の方という調査結果がありますが、薄型で軽量な素材(Ceraluminum=セラルミナム)、日本向けのアースカラーが好評です。小売店からも日本の市場にとても合っていると好評価をいただいており、次のモデルの開発にも着手しています。


―― 御社のみではなく、PC市場全体の需要見通しについてお聞きします。コロナ禍を経て、2025年はWindows 10のEOSが控えており需要が見込めますが、その先についてはどのようにお考えでしょうか。


ピーター・チャン PC市場については楽観視しています。コロナ禍が終われば需要がなくなるのではないかという見方もありましたが、今でもリモート会議が行われているように、コロナ禍で変化した働き方、生活スタイルがPCの普及を後押ししています。これからAIの活用も進み、データ収集や創作にパーソナルなPCを使いたいという方はますます増えてくると思います。


―― 今後さらに市場が伸びていく上で、どのようなものが重要になってくると考えていますか。


ピーター・チャン AIをPCで活用するというところは、まだ始まったばかりという状況で、今の段階では勉強や調査の仕方が変わったという程度かもしれませんが、2年後には、このインタビューの取材の仕方や、皆さんの要約の仕方なども全然変わってくるのではないでしょうか。


 今後、そういったソリューションレイヤーをいかに使いやすい形で提供するかといったことが鍵になると考えています。既に一部はプラットフォームとして実装されていますが、まだまだユーザーフレンドリーな状況ではありません。そういった機能とソリューションを連携させ、融合させて提案/提供できるか、そこが鍵になってくると思います。


●果敢なチャレンジは今後も続けていく


―― 最近は面白いPC、個性的なPCが少なくなってきたと感じています。その中で、2画面PCやフォルダブルPCなど、個性的なPCを出し続けているASUSは最後の希望と感じています。これからも他社がやらないような個性的なPCを開発し続ける意向はありますか。


ピーター・チャン ありがとうございます。2画面PCもそうですが、GPUボックスを外付けできるゲーミングタブレットの「ROG Flow Z13」、ポータブルゲーミングPCの「ROG Ally」なども当時は新しい試みでした。成功も失敗もあると思いますが、このような新しいチャレンジはこれからも果敢に続けていきます。


 我々のポリシーである「デザインシンキング」にのっとり、ただ技術を見せつけるだけにとどまらない、ユーザーにとって意味があるものを提供していきたいと考えています。我々はQualcommとの開発も共同で進めており、これから何か新しいことができればと考えています。


―― 2024年に個別にお話させていただいた際、私は「ASUSのハイエンドゲーミングPCは付加価値に優れる一方、メモリやストレージ容量が少ない」と不満を述べましたが、2025年の新製品は変わりました。


アルヴィン・チェン ありがとうございます。同様のフィードバックをユーザーからもいただいたこともあって、2025年モデルでは改善しました。例えば「ROG Strix SCAR 16」や「ROG Strix SCAR 18」シリーズでは、4モデル中3モデルが64GBのメモリと2TBのストレージを搭載し、メモリソケットとストレージソケットへのツールレスアクセス機能も用意しています。


―― 国内のエンスージアストユーザーは大いに喜んでいると思います。ユーザーが容易に交換できるツールレス機構も大歓迎なのですが、交換作業には一定のリスクも伴い、保証の問題も絡んできますが、この点はどのようにお考えでしょうか。


デビッド・チュー ツールレスアクセス機構を用意している製品に関しては、カバーを開けただけでメーカー保証が消失するということはありませんが、購入時の構成に戻していただくことが前提です。通常保証の適用範囲内になるかは内容次第となりますが、分解作業を含め、いかなる原因による故障でも20%の負担で修理を行う「あんしん保証」、負担なしで修理する「あんしん保証プレミアム(有償)」も用意していますので、ご加入をご検討ください。


アルヴィン・チェン メモリやストレージの増設については、販売店と協力して対応することも検討しています。今後もユーザーからのフィードバックを製品展開に反映していく用意がありますのでご期待ください。



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