重たいモバイルディスプレイと老眼からの解放! 独自チップを搭載したARグラス「XREAL One」を試す

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2025年06月19日 17:11  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

「XREAL One」

 PCにサブディスプレイを接続すると作業効率が爆上がりすることから、オフィスや自宅で使っている人は少なくないはずだ。USB Type-Cケーブル1本で映像と電力供給も行えるモバイルディスプレイも増えてきたことから、日頃から持ち歩いているという人もいるだろう。


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 しかし、購入したものの「重くて持ち歩きたくない」「カフェなどで広げるスペースが意外とない」といったケースに直面していないだろうか。


 そうした状況でおすすめしたいのが、XREALの最新ARグラス「XREAL One」だ。他のARグラスと何が違うのか。本製品を試用する機会を得たので、ARグラスを外部ディスプレイとして使うことのメリットとともに紹介したい。


●XREAL Oneとは?


 XREAL Oneは、XREALが1月17日に発売した最新のARグラスだ。同社はこれまでも、「Nreal Light」「Nreal Air」「XREAL Air2」「XREAL Air2 Pro」といったARグラスや、リモコン型デバイス「XREAL Beam」などを市場に送り出してきた。


 XREAL Oneが、これまでのXREALシリーズと異なるのは、同社製チップ「XREAL X1」(以下、X1)を搭載している点だ。従来はホストとなる端末に専用アプリ「Nebula」をインストールしたり、XREAL Beamや「XREAL Beam Pro」などと接続したりすることで、視界に表示される仮想的なディスプレイを固定できる「3DoF」に対応していたが、X1チップを搭載することで、グラス単体でそれが可能になった。


 視野角は、XREAL Air2 Proの46度から50度へと拡大し、最大輝度も500ニトから600ニトに向上した。レンズの透過度合いを変えられる3段階の「エレクトロクロミック調光」を使えば、明るい環境でも視認性を高められる。X1チップの搭載により、表示は最短3ミリ秒の低遅延で、グラス本体でのモード切替、瞳孔間距離の調整など、さまざまな操作も行えるようになった。


 ディスプレイは0.68型SONY製のマイクロOLEDを採用し、1920×1080ピクセル解像度を実現している。国際的な認証機関のTUV Rheinland(テュフラインランド)による「Eye Comfort(5つ星)」「High Visibility(高視認性)」「Color Accuracy(色精度)」「Low Blue Light(ブルーライト軽減)」「Flicker Free(フリッカーフリー)」の認証を受けている。


 最大367型の投影ディスプレイサイズで、2m〜10mの距離設定が行える他、アスペクト比32:9のウルトラワイドモード表示にも対応する。音響面に関してはBOSEが手掛けており、ノイズキャンセリング対応マイクを搭載しているのでヘッドセットとしても使える。では、実物をじっくり見ていこう。


●大きめのサングラスのようなXREAL One


 XREAL Oneのパッケージには、本体の他に保護ケース、専用ケーブル、ノーズパッド、クリーニングクロスが含まれる。


 ノーズパッドは、標準でMサイズのものが本体に取り付けられているが、SサイズとLサイズも用意されている。装着してみて違和感があるようであれば、取り換えてみると良いだろう。


 ケーブルはXREAL One専用だ。本体と接続する部分にちょうど良いカーブがついており、挿し込むと本体と一体化する。


 右側のテンプルには、ボタンが全部で3つ搭載されている。上側のボタンはクイックボタン、またはショートカットキーで、クリックや長押しに対して機能を割り当てられる。


 下側の赤いボタンはXボタンで、メニューを呼び出したり、画面位置をリセットしたりするのに使える。+/−ボタンは、通常であれば音量調整に、メニュー表示時にはメニュー内のカーソル移動に使う。長押しすれば、エレクトロクロミック調光のレベル変更を行える。


 左右のテンプルには、上下にスピーカーを搭載している。


 質量は、公式では約82gとされているが、ノーズパッドを含む実測値では84.5gであった。


 映像投影の仕組みは、他のXRグラス同様だ。まずグラスの上部からインナーレンズへ向けてプロジェクターのように投影する。その映像を反射させたものをユーザーは見られる。大画面のように見えるのは、目と投影された映像の距離が近いからというわけだ。


 前述の通り、X1チップを搭載した結果、アプリ不要でMacやWindowsの拡張ディスプレイとして使えるようになった。Galaxyのフラグシップモデルなら、XREAL OneをつなげてPCのようなUIになるDeXモードも使うことができる。


 果たして、拡張ディスプレイ(サブディスプレイ)の代わりになるのだろうか。


●老体にぴったりな作業環境を構築


 筆者はUMPC(ウルトラモバイルPC)を愛用しており、取材へ出掛ける際は3in1 PCの「ONEXPLAYER 2」と、マウス操作もできるキーボード「HHKB Studio」、そしてその日の気分に合ったモバイルディスプレイをバックパックに入れている。


 そのモバイルディスプレイの代わりにXREAL Oneをバックパックに入れることで、強制的に(物理の)サブディスプレイを使えないようにして、数回取材へ行くことにした。


 取材時にXRグラスをかけていては、周囲が見えなくなるし、写真撮影もできないので、利用するのは取材後の原稿執筆時だ。サードプレースとして利用できるカフェ、またはコワーキングスペースなどへ入り、3in1 PCとキーボードを展開する。そして、XREAL Oneを取り出してケーブル接続をする。


 最新のファームウェアでは、赤いXボタンのダブルクリックでメニューが表示され、ワイド画面にすぐ切り替えられる。また、シングルクリックで画面を空間固定(3DoF)モードと頭の動きに合わせて動かす追従モードを切り替えられる。長押しすれば、顔を向けている方向に画面がスッと移動する。


 この一連の使い方を覚えた結果、物理的なサブディスプレイ同様にXREAL Oneを使えるようになった。


 むしろ、それ以上に作業しやすいと感じるようになった。というのも、筆者も寄る年波に勝てず、老眼が進行しており、外出用の度の強いコンタクトレンズを装着していると、30〜40cmの距離のディスプレイの文字がぼやけて見えてしまう。目に負担を強いながら作業するのが当たり前になっていた。


 しかし、XRグラスは数m先に映像が見える仕様になっている。そこに大画面が表示されているのだから、物理的なサブディスプレイやPCのディスプレイより、くっきり文字が見えるというわけだ。


 ワイド画面に設定しておけば、同時に3つのウィンドウを表示させても窮屈さを感じることはない。PCのディスプレイに目をやることなく、XREAL Oneに表示されている情報だけで原稿を執筆することができた。


 3時間ほど作業していたが、物理的なモバイルディスプレイを使っているときより、目の疲労感が少ないと感じた。また、腰を曲げずに作業できるからか、肩や腰が痛くなることもなかった。


 チップを搭載しているので、発熱がどうなっているのか気になる人もいるかもしれないが、肌に触れているテンプル部分が熱を持つことはない。グラスの中央、いわゆる眉間に当たる部分を触ると「おお、温かい」と感じる程度である。


 持ち歩いてみて何よりありがたいと感じたのは、一般的なモバイルディスプレイより軽いことだ。


 最近、好んで使っていた15.6型モバイルディスプレイUNIQ「PROMETHEUS CAST 15.6inch」は、スタンド兼ケースも合わせると約1.21kgだ。それに引き換え、XREAL Oneは、持ち歩きセットである保護ケースとケーブルを合わせても241gである。1kg近く軽くなったことになる。


 XREAL Oneは、屋外でも使いやすい。モバイルディスプレイを広げるのがためらわれるような場所でも、サングラス(のようなもの)なら違和感がない。DisplayPort Alternate Mode対応のUSB Type-C端子を搭載しているPCであれば、ケーブル一本をつなげるだけで、すぐに仕事に取り掛かれる。


 エレクトロクロミック調光の透過率0%(シアターモード)では、明るい屋外でも文字を見やすい。どのように見えるのかは、下の写真を参考にしてほしい。


 今回は、試用期間が長かったおかげで「XREAL Oneは、モバイルディスプレイの代わりとして仕事に使えるのか」ということをじっくり検証することができた。


 結論としては「使えるし、重い荷物がつらい、近くが見えづらい老体に優しい仕事環境を構築できる」というものであった。


 唯一のネックは視野角が50度と、比較的狭いことだろう。グラス型では、視野角を広くすると映像の端がゆがんでしまいがちとのことだが、本体内にチップを搭載したことだし、さらなる飛躍を望みたいところだ。



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