
キリストになったトランプ。神をも恐れぬ行為、ではない(写真:AFP=時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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――世界は一気に激変していますが、そのきっかけは4月29日のトランプとプーチンの電話会談だと。その1時間30分が全ての原因ではないか、ということですか?
佐藤 この電話会議はとても重要だったと私は見ています。トランプは分からないことがあると、いつもプーチンにその答えや見方を教えてもらっています。ふたりはお互いに誕生日に電話をしている間柄ですからね。
――すると、前々回で解説いただいた米中首脳会談に関しても、「習近平と仲良くした方がいいよ。ビジネスのキーパーソンもたくさん連れて行ったらいいんじゃない」と言われた可能性はありますね。
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佐藤 ありますね。
――で、帰国して「よくやったな、ドナルド」と言われて有頂天になっている、と。
佐藤 完全に米国とロシアの関係はそうなっています。そしていつの間にか、米国と中国が手を握ってしまいました。
しかし米国の意向を受けて、中国と喧嘩していた俺たちは何なんだ?と考えてはいけません。そんな難しいことは考えないで、今の状況に適応していくことが大切です。
――はい。
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佐藤 そしてトランプは、フランスの人口統計学者のエマニュエル・トッドのような「宗教ゼロ」人間、ニヒリストとは違います。トランプは偉大な使命に燃えて生きている人なんだ、と捉えたほうが事態を整合的に解釈することができます。リアリズムとか正義と不正、善と悪とかいう基準ではないんですよ。
――なにが基準なんですか?
佐藤 損か得か、快か不快か、です。つまり、得をして快適な場所を常に選ぶことです。日本もこの方向に進むべきです。
――それは完璧にトランプの生き方です。しかし、トランプは4月に自身をイエス・キリストのように描いたイラストをSNSに投稿。ローマ教皇レオ14世からも批判されています。これ、いいんですか?
佐藤 トランプはプロテスタントのカルヴァン派ですから、カトリックの教皇の権威などまったく認めていません。むしろ、イラン戦争反対の声をあげるローマ教皇に対して、「俺が神から与えられた使命を遂行しているのに、また邪魔してやがるな」という感情なんでしょう。
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なので、いくら批判されようと全然問題ありません。
――さらに、首都ワシントンに建築予定の凱旋門は高さ76.2mだそうです。以前の連載で予測していたように、やはり70mを超えてきましたね。
佐藤 偉大な国には、偉大な凱旋門が必要ですからね。
――また、マイアミには47階建ての「トランプ記念図書館」を作るようです。次は何を作るのでしょうか?
佐藤 ワシントンに高さ500mを超えるような巨大ピラミッドでしょう。北朝鮮も壇君陵というピラミッドを作りましたから。
トランプは自分が死んだ後にそこに入るつもりでしょうね。建造に20年はかかるので、いまから作らないと間に合わないんですよ。
――ワシントンの住民、大迷惑じゃないですか。
佐藤 トランプほどの人が、普通の墓に収まると思いますか?
――無理です。
佐藤 だから高さ500mのピラミッドなんですよ。そして、遺体を冷凍保存して、「また蘇(よみがえ)れるようにしろ」との御遺言を残すと。
――そんな米国をエマニュエル・トッドさんは「虚無的な暗殺国家」と呼んでいます。
佐藤 それは違いますね。ヨーロッパのフランスやドイツこそがニヒリズムの暗殺国家に成り下がっています。それに対して、トランプは「宗教ゼロ」ではありません。宗教を信じています。
世界を平和にするために、神の使徒として中国へ行き、安定を勝ち取ってきました。ゼレンスキーに対しても米国からの援助を99%減らし、ウクライナに平和を実現しようとしています。
しかし、そのウクライナをニヒリズムの暗殺国家であるフランスとドイツが支援しているから、戦争が続いているんです。
――トッドさんは、今回は外れたことを言っちゃいましたね。
佐藤 ヨーロッパの感覚で米国を考えるから間違えるんですよ。
――なるほど。
佐藤 しかし、その「宗教ゼロ」のとんでもない連中を抱えるヨーロッパが、日本に抱きついてこようとしています。
とにかく、近寄るべきではありませんね。特に、イギリスがインテリジェンスでアドバイスしてきたら危険です。それを聞けば、負けます。
――007が地に落ちたと。すると、日本は流れに身を任せながら、ヨーロッパから離れる方向に進むべきだと?
佐藤 リアリズムから考えると、ヨーロッパが日本まで攻めて来て日本を滅ぼすことはできませんよね?
――はい。
佐藤 米国なら可能です。そして、ヨーロッパに日本を守ってくれる力はありますか?
――守ると言っていますが、口先だけでしょうね。
佐藤 だから、そういう言葉に騙(だま)されないことです。米国は守ってくれる力は、あります。それをしてくれるかどうかはわかりませんけどね。
――ですね。
佐藤 なによりも重要なのは、米国には日本を完全に壊滅させるだけの力があることです。80年前に壊滅させられかけましたからね。
――原爆2発を叩きこまれ、なんとか日本は生き残りました。
佐藤 ヨーロッパが狙っているのは銭です。日英伊三国共同開発の次期戦闘機「GCAP」は、なんだかんだで頓挫していますし。
――その計画が一番ヤバいのでは......。
佐藤 はい。イギリスがGCAPに空対地攻撃能力を作っていますが、日本に空対地能力は必要ですか?
――専守防衛で四方が海に囲まれていますから、必要なのは空対艦攻撃能力です。
佐藤 空対地能力は、地上攻撃する事が前提です。それを米国の同盟国である日本が持てばどうなりますか?
――いまの仲良し米中関係から言うと、「ちょっと困りまんな、あんな戦闘機作られたら迷惑でっせ」と習近平組長から捻じ込まれます。
佐藤 トランプはそういう飛行機を作っていることを知らない可能性がありますよ。
――あ! それはヤバいです。
佐藤 さらに「米国の雇用がどのくらい増えて、米国にいくら銭が入るんだ?」と日本に聞いてくる可能性もあります。
――英伊に全額献金しますから、0ドルであります。
佐藤 「ふざけるな、米国から買え!」と潰されるでしょうね。
――『たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て』(手島龍一/新潮社)では、次期支援戦闘機FSXの開発を巡る日米の衝突が描かれました。その続編、『消えゆく日米同盟―日英伊GCAPを潰せ』が生まれてしまいます。
佐藤 そういうことですね。
次回へ続く。次回の配信は6月12日(金)を予定しています。
取材・文/小峯隆生

