ロシアの遺跡で見つかった約5万9000年前のネアンデルタール人の大人の大臼歯(同一の歯を向きを変えて撮影)。とがった石器で虫歯を治療した痕と考えられる穴が開いており、人類最古の例という(米科学誌プロスワン提供) ロシア南部アルタイ山脈の麓にあるチャギルスカヤ洞窟遺跡から、約5万9000年前と推定されるネアンデルタール人の大人の大臼歯が見つかった。とがった石器で開けた大きな穴があり、ロシア科学アカデミー・考古学民族学研究所などの研究チームが人類最古の虫歯治療痕と考えられるとして、14日、米科学誌プロスワンに発表した。
この大臼歯は下顎側で、マイクロCTなどで詳細に分析した結果、かみ合わせ面にできた虫歯部分にとがった石器を当て、主にドリルのように回転させて穴を開けたとみられることが分かった。穴は深く、歯髄腔(しずいくう)に達しており、神経が死んで一時的に痛みが消えた可能性がある。
穴を開けた後に歯がすり減っているほか、口内の酸性環境でエナメル質からミネラルが溶け出る「脱灰」の痕があることが、生きている間に治療が行われた証拠となった。研究チームは現生人類(ホモ・サピエンス)の歯と石器で実証実験も行った。
これまで人類最古の虫歯治療痕とされていたのは、イタリア北部で見つかった約1万4000年前の現生人類の若い男性の大臼歯。しかし、かみ合わせ面の虫歯部分を石器でほじくり出すようにして穴を開けていた。研究チームは、ネアンデルタール人の治療痕の方が4万年以上古いのに、優れた技術だと指摘している。

ロシア南部アルタイ山脈の麓にあるチャギルスカヤ洞窟遺跡(左)と虫歯治療痕のあるネアンデルタール人の大臼歯が見つかった場所(米科学誌プロスワン提供)