首相官邸に入る石破茂首相(中央)=10日、東京・永田町 石破茂首相は初の日米首脳会談を終え、中国訪問に向けた検討を本格化させる構えだ。石破政権内では早ければ5月の大型連休に合わせて訪中する案が浮上している。首相は習近平国家主席との2回目の会談に臨み、日中関係改善の流れを確かなものにしたい考えだ。
首相は力を強める中国との関係安定化を重視しており、「習氏と信頼関係を高めるため、最もいい時期に訪中する」と繰り返している。トランプ大統領との会談で日米同盟を軌道に乗せた後、早期に訪中する青写真を描いてきた経緯があり、自民党幹部は「次は中国訪問だ」と語った。
政権内では大型連休中に加え、6月の通常国会閉幕後に訪中する案が取り沙汰されている。
首相は昨年11月にペルーで習氏と会談し、共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」推進を確認した。間を置かずに訪中を探るのは、ようやく見え始めた関係改善の機運を逃したくないためだ。
石破政権発足後、日中間では友好ムードが芽生えつつある。昨年12月下旬に岩屋毅外相が北京を訪問し、王毅外相と会談。今年1月中旬には北京で約6年3カ月ぶりに「日中与党交流協議会」が開かれ、中国側は首相の訪中を歓迎する意向を自民党の森山裕幹事長らに伝えている。
ただ、中国が日本に接近する背景には、米国との対立激化をにらみ、日米の分断を図る思惑があるとの見方が強い。自民中堅は「前のめりになれば足をすくわれかねない」と警告した。
自民内には中国人向けビザ(査証)の緩和措置などを捉え、「石破政権は中国に融和的過ぎる」(若手)との不満も渦巻く。日中間には日本産水産物の禁輸継続など多くの懸案が横たわっており、首相が解決に向けて具体的な成果を出せなければ、批判が強まる可能性も否定できない。
日米首脳は先の会談後、中国を名指しして「力による現状変更の試み」を批判する共同声明を発表。中国は反発しており、在中国日本大使館公使を呼び出して「強烈な不満」を伝えた。日本外務省関係者は「日中関係は時期より成果が大事だ」と述べ、首相は中国の動きをにらみながら、訪中のタイミングを慎重に見極めるべきだと指摘した。