どうして日本人は“箱型”が好きなのか ミニバンが売れ続ける日本市場の特異性

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2025年05月17日 09:21  ITmedia ビジネスオンライン

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なぜミニバンが人気なの?

 いまの日本は、ミニバンが大人気です。箱形ボディに多人数を乗せるクルマがミニバンとなります。特に日本では両側スライドドアを備えるタイプが人気となっています。本来的には3列シートが基本になりますが、いまの日本には、スライドドアに2列シートというスタイルも数多く存在しています。


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 どれだけ日本でミニバンが売れているかといえば、2024年の登録車の新車販売ランキングでは、3位の「シエンタ」、5位の「フリード」、7位の「セレナ」、8位の「アルファード」、10位の「ヴォクシー」とベスト10のうち5モデル、つまり半分を占めます。軽自動車では、1位がホンダの「N-BOX」、2位がスズキ「スペーシア」、3位がダイハツ「タント」と、ベスト3すべてが両側スライドドアの2列のミニバンとなります。


 こういう国は先進国で他にはありません。日本だけの現象です。


 もちろん日本が最初からミニバン王国であったわけではありません。歴史を振り返れば、最初に主流となったのはセダンです。庶民にクルマが普及するのをモータリゼーションと呼びますが、それが日本で発生したのは1960年代。


 そこでヒット車となったのは、トヨタの「カローラ」であり、ライバルの日産「サニー」でした。上級クラスではトヨタ「クラウン」と「コロナ」、日産の「セドリック/グロリア」「ブルーバード」と「スカイライン」が売れていました。これらは、すべてが「セダン」を基本とするモデルです。


 セダンのすぐあとに人気を集めたのが、ドアが左右に2枚だけのクーペです。かっこいいクルマとして注目されます。さらに60年代にはトヨタ「2000GT」をはじめマツダ「コスモスポーツ」など本格スポーツカーも登場しています。ただし、これらクーペや本格スポーツは人気こそ高いものの、たくさん売れたわけではありません。売れ筋は4ドアでした。


 1970年代になると、後ろにトランクのないハッチバック車が人気となります。名前を挙げればトヨタ「スターレット」やホンダの「シビック」、三菱の「ミラージュ」です。マツダのハッチバック「ファミリア」は1980年代に大ヒット車となっています。


 1980年代になると、さらに幅広い車型が人気となります。かっこいいクーペでデートのために使われる「スペシャリティ」に注目が集まり、ホンダ「プレリュード」や、日産「シルビア」、トヨタ「セリカ」が若者たちに人気となりました。


 また、80年代にはアウトドアにクルマで遊びにいくというRVブームが生まれます。クロスカントリー車(いまで言うSUV)や、ステーションワゴンの人気が急上昇します。人気となったのが三菱「パジェロ」やトヨタ「ハイラックス」、日産「テラノ」でした。


 この流れの延長で、1990年代になるとトヨタ「RAV4」や「ハリアー」、ホンダ「CR-V」がデビューします。クロカンではなく、街乗りメインの正真正銘のSUVの誕生です。


 同じ1990年代には、トヨタの「エスティマ」、日産「セレナ」、ホンダの「ステップワゴン」がデビューします。商用車ベースではない、乗用を主眼として生まれた、いまのミニバンの開拓者となります。


 ただし、これらSUVやミニバンの先駆者は、大ヒットしたわけではありません。あくまでも、昭和から平成初期の不動のベストセラーはトヨタの「カローラ」です。「カローラ」は、1969年から2001年まで、33年間連続の国内販売台数1位の座を守り続けていた絶対王者だったのです。


 ただし、「カローラ」の1位には、特別な理由があります。それは派生モデルがたくさんあったということ。「カローラ」は、セダン、クーペ、ハッチバック、商用バン、ステーションワゴンと5つもの車型を持っていました。言い方を変えると当時は、「カローラ」にある5つの車型が売れ筋だったのです。


 しかし、2002年に「カローラ」が1位の座を追われた後、日本の市場は大きく変化します。


 2000年代にはトヨタから「ノア/ヴォクシー」「アルファード」が独立モデルとして誕生。コンパクトなミニバンとしてトヨタ「シエンタ」、ホンダ「フリード」も誕生します。


 そして2010年代になると、コンパクトからミドル、ラージまで、幅広い車種をそろえたミニバンの人気がジワジワと高まります。軽自動車では2011年に「N-BOX」がデビュー。「N-BOX」はデビュー3年目に軽自動車販売ナンバー1となり、翌2014年こそ2位となりましたが、その後、2024年まで常に1位という不動の人気を獲得。軽自動車に両側スライドドアの2列ミニバンという潮流を決定づけたのです。


 そうしたミニバンの増加は、2020年代になっても継続します。さらにトヨタは2000万円となる超高級ミニバン「LM」を2023年にリリース。また、黒塗りの「アルファード」はハイヤーに使われるようになります。つまり、ラージクラスのミニバンはVIPを乗せる高級車という新しい役割を得ていたのです。


 その結果、いまではミニバンは、子育て世代だけでなく、ファミリーや高級車など、幅広い使われ方をするようになったわけです。


※この記事は『自動車ビジネス』(鈴木ケンイチ/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。



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  • 何で箱型が好きなのかは書いてないね…
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