写真/産経新聞社 2024年7月、ロケバスの車内でAさん(女性・20代)に性的暴行を加えたとして、不同意性交などの罪に問われている、お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバーの斉藤慎二被告(43)に対する第4回公判が、5月13日(水)に東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)で開かれた。
第4回公判では、検察側が証人請求をした番組アシスタントディレクター(AD)が証言台に立った。裁判を傍聴した筆者が詳報する——。
◆ロケに参加したアシスタントディレクターが法廷へ
開廷直前に入廷してきた斉藤被告は、これまでと同様の黒色のスーツに、紺色ネクタイ姿。傍聴席からの目を避けているのか、まっすぐ前を向いて弁護側の隣の席についた。
4回目の裁判ということもあってか、初公判に比べて慣れたような素振り。しかし、証人が入廷してくるまで、法廷の静寂に緊張感が高まったのか深呼吸をしていた。
斉藤被告はこれまでと同じく、机の上にメモ用紙とペンを置いていたが、この日、メモを取った動作は確認できなかった。
伊藤ゆう子裁判長から開廷の宣言がされた後、証人が法廷に呼ばれた。だぼったいレディーススーツに身を包んだ、若めの女性。法廷の中央にある証言席に座ると、検察側から尋問がはじまった。
証人の職業は、フリーランスの「アシスタントディレクター(AD)」。事件当日のロケにスタッフとして参加していた。
◆「Aさんが同乗を希望した事実はない」番組ADが断言
検察側は、犯行の裏づけに重要なロケバスについて、細かく尋問していく——。証人によると、事件当日は「10から15人くらいのスタッフがいた」という。さらに証人は、事件現場とされるロケバスに同乗していた。
「(ロケバスには)Aさんと被告人、私とFさんが乗っていました」
Fさんとは、第3回公判に証人出廷した「ディレクター」のこと。そんなFさんは、ロケバスにAさんと斉藤被告が同乗した理由について語っていた。
「1台目のロケバスは他の出演者を迎えに行く段取りだったので、おのずと1台目は他の出演者用になりました」(Fさん証言)
「送迎の関係」という制作側の事情だったといい、証人もAさんから斉藤被告と同乗することを希望されたことは「ないです」と断言していた。
証人もFさんも同乗していたロケバスで、なぜ事件が起きたとされたのか。そして犯行は目撃されていないのか。Aさんと斉藤被告がロケバスの車内で休憩中、スタッフは外にいたという。
「ロケ先での事前準備やセッティングなどをしていました」
Fさんも、ロケバスの車内で出演者だけになることは「よくあることだ」と話していた。
「ケースバイケースですが、タレントだけになるときもあります」(Fさん証言)
◆“口腔性交”の経緯が争点に…
この日の裁判で焦点となったのは、3回目にあった「口腔性交」について。起訴内容の中で、最も法定刑が重い「不同意性交罪」で起訴されている。
検察側の見立てでは、「ロケが終わって、Aさんはピンマイクを外すためにロケバスに戻ったときに起きた」とされている。この「ピンマイクを外すように指示した人物」こそ、今回出廷した証人だった。
「普通は音声さんがつけるんですけど、服装によっては本人につけてもらうこともあります。被害者の方がワンピースを着ていて、下からたくし上げる必要があったので、ロケバスの中で本人につけてもらいました」
起訴状などによると、ロケの途中の車内でも、胸を触ったり、ディープキスをするなどのわいせつ行為があったという。それでもAさんは全てのロケが終了した後も、斉藤被告がいるロケバスに戻った。
証人は、ロケバスの外に立っていたAさんに声をかけていた。
「私は『ロケバスに乗りましょう』と声をかけました」
◆Aさんが「一度ロケバス乗車を拒否していた」番組ADによる新証言
弁護側の「Aさんの同意があった」という弁解を、検察側は否定するために「声をかけたときの反応はどうか」を証人に問うた。すると、こんな新証言が出てきた。
「『私はここでいいです(筆者注:ロケバスの外でいい)』と遠慮するような反応をされました。私は『気にせずに戻ってください』と声をかけました」
証人によると、Aさんはロケバスに戻ることを一度拒否したというのだ。結局、斉藤被告が車内にいるロケバスのドアを証人が開けると、Aさんは乗り込んだ。
「(Aさんは)他の出演者にご挨拶された後、ロケバスに乗っていきました」
起訴状などによると、Aさんがロケバスに戻った直後、「口腔性交」の犯行があったという。
◆斉藤被告と被害者Aさんの「犯行後の会話」も証言
対する弁護側も尋問をはじめた。検察側の有罪立証を崩すために、Aさんの当時の様子を事細かに聞いていた。
「Aさんが性被害に遭ったようだ」とFさんから明かされたときのことを、思い出すように語った。
「驚きました」
というのも、ロケ当日は「Aさんの様子がおかしかったこと」や「ロケバスを別にして欲しいとの要望」もなかったからだという。
さらに、証人がAさんに対し、ロケバスに戻るように促すしても、「嫌がるそぶり」などの違和感はなかったと振り返った。
そのうえ、前代未聞の犯行後も二人は雑談していたようだ。二人がロケバスから降車した後、隣に立っていた証人は、その会話を聞いていた。
「斉藤さんはAさんがロケ中に言っていた美味しいお店を教えてほしいと言っていました」
証人はロケ中もAさんと何度も会話していたが、どの場面でも違和感はなかったと繰り返し述べた。
◆裁判長は“違和感”を質問
検察側と弁護側の尋問が終わった後、裁判官が質問をはじめた。伊藤ゆう子裁判長は、これまでの尋問内容を踏まえて、このように疑問を呈した。
「車内に異性がいる中で、服をたくし上げるようにピンマイクを取ることに少し違和感があるが、いつもお願いしていることなのですか?」(裁判長)
「ピンマイクを外すくらいのことであれば、体の向き次第では見えることはないので、お願いしました。大きく着替えるときは、男性の方と別にしています」(証人)
さらに、裁判長は「車内で着替える場所として区切られているか」と確認した。すると、証人はこのように振り返った。
「着替える場所として区切られていることはありません」
◆口腔性交の前に「斉藤被告が思ったこと」
徐々に積み上げられていく、第三者からの証言。一方で、弁護側は「口腔性交」の行為の存在は認めたものの、「同意があった」などと故意を否定している。
「ロケが全て終了し、斉藤さんが着替えるためにロケバスに乗ると、Aさんが乗り込んできました。斉藤さんは『あれ、もうAさんはバスに用がないはずだけどな。もう少し自分と一緒にいたいから、バスに乗ってきたんだろうな』と思いました。約10秒にわたる口腔性交が行われました」(弁護側冒頭陳述)
この弁解に対して、今年3月の第2回公判でAさんが出廷すると、こう証言した。
「斉藤のことが気持ち悪くて怖くて、近寄りたくない気持ちでした」(Aさん証言)
ロケバスに再び戻った理由についても語っていた。
「私のような素人が勝手な行動をすると迷惑がかかるし、私の荷物や着替えが斉藤の乗ったロケバスにあるからです」(Aさん証言)
◆検察側は「第三者証言から外堀を埋めている最中」か
今後の審理内容は、裁判で明かされていない。そんな見通しのつかない公判について、裁判専門の記者は見解を示す。
「今回の事件はロケバス車内という密室で行われていて、犯行の目撃者もいません。検察側はAさんの証言の信用性を高めるために、直接の目撃者ではないものの、番組関係者などの第三者証言から外堀を埋めている最中でしょう」
通常、検察側の立証が終わった後に、弁護側が請求した証人尋問や被告人質問が行われる。この裁判では、初公判の前に争点などを絞り込む「公判前整理手続」が実施されており、少なくとも証人出廷する人物は決まっているはずである。
次回の公判は、6月2日(火)に決まった。
取材・文/学生傍聴人
【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。