
東京女子プロレス
上福ゆきインタビュー 後編
(前編;壮絶なアメリカ生活と、"巣鴨のレディー・ガガ"から東京女子のリングに上がるまで>>)
芸能事務所からの独立、バイク誌編集部への表紙起用の直談判など、既存の枠にとらわれない独自のキャリアを築いてきた上福ゆき。インタビュー後編では、2023年から始まったアジア遠征の真意、上原わかなとのタッグ「Ober Eats」、そして6月7日の後楽園ホール大会で控える荒井優希とのプリンセス・オブ・プリンセス王座戦にかける思いに迫った。
【アジア遠征を断行した理由】
――上福選手は2023年からアジア遠征を始めましたが、多くの日本人レスラーがアメリカを目指すなか、なぜアジアを選んだのですか?
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上福 私のInstagramは台湾や東南アジアのフォロワーが多く、"受けがいい"という感覚があったからです。みんなと同じことをしてアメリカで埋もれるより、未開拓のアジアを攻めたほうが面白い。自分だけの道を進みたかったのが一番の理由です。
――交渉もすべてご自身で?
上福 はい、SNSでの発信です。中国語や英語で「アジアでプロレスがしたい」と発信し続けていたら、現地の団体関係者からInstagramのDMで連絡が来るようになって。ダイレクトに交渉を進めました。
――2023年11月には、シンガポールのSPWで第5代クイーン・オブ・アジア王座を戴冠。さらに2024年5月には、ベトナムでVPW認定女子王座も獲得して「アジア二冠女王」となりました。
上福 日本は、アイドルを応援するようなカルチャー、ファンが一定数を占めていると思うんですけど、ベトナムやシンガポールにはそういった文化はほとんどありません。純粋に、プロレスという"エキサイティングなエンターテインメント"を楽しみに来ている観客ばかりでした。
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それに向こうは、興行が開催される頻度が3カ月に1回くらいで、日本に比べて圧倒的に少ない。だからこそ、そのたった1回の大会にかける現地ファンの熱量と爆発力がものすごく強いですね。
【上原わかなとのタッグ「Ober Eats」で成し遂げた快挙】
――2024年11月のアメリカ遠征で、上原わかな選手と同室になったのを機にタッグを結成していますね。
上福 同室になったことで、上原と深く話すようになって。実は、上原が以前から「上福さんと本格的にタッグを組みたい」と会社に直訴していたらしいんですけど、私の耳には届いていなかったんです(笑)。2025年のタッグトーナメントで、私のパートナーが桐生真弥から上原に変わったんですが、後から彼女本人に直訴の事実を聞かされて、熱意を知りました。
――「Ober Eats」は2025年9月に王座を奪取し、2026年にはプリンセスタッグ王者として「第6回ふたりはプリンセスMax Heartトーナメント」を完全制覇するという史上初の偉業を成し遂げました。
上福 それまで組んでいた桐生真弥はフラットな立場でしたが、上原は完全に後輩。私にとって後輩と本格的に組むのは初挑戦でした。だからこそ、技術だけでなくレスラーとしての立ち振る舞いなども教えましたね。「プロレスラーとしてたくましく、強くなってほしい」という願いを込め、親のような気持ちで見守っていました。
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――3月の両国国技館大会でジェシー・マッケイ&キャシー・リー組に敗れ、4度目の防衛に失敗し王座陥落。ただ、バックステージのコメントでは上原選手への愛情を感じました。
上福 愛情なんて注いでないですよ。ビジネスです(笑)。ただ、彼女が隣で大きく成長してくれた実感はあります。
王座を奪った「享楽共鳴」の中島(翔子)さんと(ハイパー)ミサヲさんは特別な先輩で、特に中島さんは私の基礎を作ってくれたコーチのような存在。だからこそ、「中島さんに認められたい。超えたい」という感情が原動力でした。
タッグ王者のままタッグトーナメントを制覇して「歴史に名を刻んだ」と言われますが、記録に興味はないです。歴史は誰かが塗り替えるし運がよかっただけ。王者ならトーナメントを優勝して当然なので、勲章に浮き足立つことはなかったです。
【東京女子に「正式所属」した理由】
――2025年9月、東京女子プロレスへの「正式所属」を発表しましたね。
上福 ぶっちゃけると、"窓口"が変わっただけでスタンスや環境は何も変わっていません。ただ、当時は暗いニュースもあって、東京女子のファンが不安を抱えていた感じでした。だから「私がハッピーなニュースをひとつでも作れるなら」と思ったんです。
「これからもずっとここにいて、看板を背負っていく」。それを私が形にすれば、オタクたち(上福は愛情を込めてファンを"オタク"と呼ぶ)も安心できるじゃないですか。お世話になってきた団体を、自分の行動で少しでも明るく活性化させたかった。動機は本当にそれだけです。
――上福選手がリング上で最も満足感や充実感を覚える瞬間は?
上福 入場ゲートをくぐって、自分の入場曲が鳴り響くなかでリングへと向かう瞬間ですね。試合が始まってしまえば、あとはとにかく必死に闘って、勝ちにいくしかないので。
もちろん、試合後に「あの技が格好よかった」とファンの方に言っていただけるのもうれしいですけど、それ以上に「今日の衣装が一番可愛い」「ビジュアルが素敵」と褒められたほうが、個人的には遥かにモチベーションが上がります(笑)。
プロレスの純粋なコンディションや体力勝負では、一生懸命練習したところで、山下(実優)さんのような"化け物"たちに100%勝てるビジョンなんて、私には描けないんですよ。だからこそ、リングのどこにいても、自分が誰よりも輝いている「一番美しい瞬間」を作れたら、私はそれでいいと思っています。
【6.7後楽園で最高峰プリプリ王座に初挑戦】
――6月7日の後楽園ホール大会では、プリンセス・オブ・プリンセス王者・荒井優希選手に挑戦します。
上福 最近、キャリアを重ねて「若くはないな」と感じる瞬間が増えました。海外遠征やタイトル戦の連戦で心身ともに極限まで追い込まれると「うわーっ!」ってなるんですけど、のんびり生きている時より圧倒的に「今、生きているな」って実感できるんですよ。だから今回は、あえて自分を過酷な環境に追い込むために、最高峰のベルトへの挑戦を決めました。
――現王者の荒井選手には、どんな印象を持っていますか?
上福 アイドルを卒業してプロレス1本で生きる覚悟を決めてから、顔つきも身体も劇的に進化したと思います。ターニングポイントを乗り越えた強さがあるんじゃないですか。
――調印式では、上福選手から「顔を蹴ったら許さない」という発言もありました。
上福 それは盛り上げるためのリップサービスですよ(笑)。今の私がこの大舞台に立つことで、団体が活性化するなら見せるべき責任があるし、何より、ファンから「シングルのベルトに挑戦してほしい」という声もあった。
ぶっちゃけ、「うるせえな!」とも思ったんですけど、私のレスラー人生はそのうるさいオタクらに助けられてきた。だから、「たまには言うことを聞いて、期待に応えて頑張ってみるか」という気持ちでリングに向かいます。
――最後に、意気込みをお願いします。
上福 荒井も私も長い脚を活かしたファイトスタイルですが、リングで「世界で一番美しいのは私だ」という姿をお見せします。好みを超えた、圧倒的に洗練された「美しさ」の境地をお約束します。
私の技のバリエーションは多くありません。でも、ブレーンバスターやビッグブーツのひとつひとつは、技術論の上手い・下手ではなく、大切に育ててきた「私にしか表現できない、世界にひとつだけの芸術作品」なんです。
相手の顔面を捉える瞬間の美しさなら、誰にも負けません。勝敗は神のみぞ知るものですけど、最初から最後まで、誰よりも美しい上福ゆきの作品を目に焼きつけてください。
【プロフィール】
上福ゆき(かみふく・ゆき)
神奈川県藤沢市出身。173cmの長身と抜群のプロポーションを武器に、レースクイーンやグラビアアイドルとして活躍後、2017年8月に東京女子プロレスでデビュー。型破りなキャラクターと、長い脚から繰り出される強烈なビッグブーツやドロップキックを武器に頭角を現す。2020年にはインターナショナル・プリンセス王座を戴冠。近年はアジア諸国への遠征を敢行し、SPW認定クイーン・オブ・アジア王座、VPW認定女子王座を獲得して「アジア二冠王」に輝く。2025年には上原わかなとのコンビでプリンセスタッグ王座を奪取、さらに同年の「Max Heartトーナメント」を現役王者のまま制覇するという史上初の快挙を成し遂げた。東京女子プロレスが誇る、唯一無二の"美しき実力者"である。
