明暗分かれた「無印良品」と「ニトリ」 2社の差はどこで生まれたのか

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2026年05月18日 05:40  ITmedia ビジネスオンライン

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明暗が分かれた無印良品とニトリ

 無印良品を展開する良品計画の業績が好調だ。コロナ禍の影響を受けた2020年8月期以外は増収が続いている。売上高は2025年8月期に7800億円を突破し、今期は8870億円を見込む。中華圏を中心とする海外事業も好調だ。


【画像を見る】苦戦するニトリ


 対するニトリホールディングス(HD)は近年苦戦している。2026年3月期の業績は、4期ぶりに増益となったものの厳しい状況だ。進出先の中国では撤退が相次いでいる。


 ニトリHDの時価総額は一時2.5兆円を超えていたが、現在は1.3兆円台まで縮小した。一方、良品計画の時価総額は2025年6月にニトリHDを上回り、現在は2兆円前後まで拡大している。


 家具販売大手のニトリと雑貨を中心に展開する無印良品。両社は異業種に見えるが、実は一部のジャンルで競合関係にある。ニトリは家具需要が減少する中で、生活雑貨などの「非家具」分野を強化してきた。一方の無印良品も家具を取り扱っており、商品領域が重なっている。


 ニトリは非家具分野で家具市場の縮小を乗り越えたいところだが、無印良品のブランド力を前に苦戦しているようだ。


●「安さ」で支持されたニトリ


 ニトリは1967年に札幌市で創業し、長年にわたり北海道で事業を展開してきた。1993年に茨城県で本州1号店をオープンし、北関東のロードサイドを中心に積極的に店舗網を広げた。


 2003年に売上高1000億円、100店舗を突破すると、本州での知名度も徐々に高まり、さらなる規模拡大を続けた。2013年には売上高3000億円、300店舗を達成。その後も成長は続き、2025年3月期は過去最高となる売上高9288億円を記録した。


 海外事業については、2007年の台湾1号店を皮切りに、2014年には中国大陸1号店をオープンした。2026年3月末時点でニトリ事業は国内808店舗、海外209店舗にまで拡大。2021年に子会社化したホームセンターの島忠事業では52店舗を展開している。


 ニトリが消費者に支持された理由は、他ならぬ「安さ」だ。かつての家具屋といえば、家族経営の小型店や地場のチェーンが中心で、価格帯やデザインもバラバラだった。


 これに対し、ニトリは大型店に画一的な商品をそろえ、低価格を実現した。家具の設計、製造、物流、販売までを一貫して手掛ける「製造小売業(SPA)」のビジネスモデルで中間コストを削減。東南アジアに自社工場を構え、製造コストも抑えた。


 国内の家具市場は、バブル期のピークに2.5兆円を超えていたが、年々縮小し、近年は約1.1兆円で推移している。海外産の安価な家具の流入や総合スーパー(GMS)などの大手小売店が勢力を広げ、販売単価が下がったことが影響した。


 こうした家具の低価格化には、ニトリが一翼を担ったと言えるだろう。市場が縮小する局面で、SPAによって低価格化を実現し、店舗数を増やした戦略はユニクロとも共通している。「衣料のSPA」がユニクロであるならば、「家具のSPA」を確立したのがニトリである。


●ニトリはピークアウトか


 しかし、ニトリの近年の業績は芳しくない。2026年3月期の売上高は9122億円で、前年比1.8%減となった。利益も2022年2月期からピークアウトしている。


 過去記事でも解説したように、人口減少で地方での需要拡大が見込めないうえ、物価高で必需性の低い家具の買い控えが起きた。さらに、近年は引越者数が著しく減少しており、それに伴って家具需要も落ち込んだ。


 海外事業においても、2026年度中に中国大陸の店舗数が100店舗から78店舗へと減少。海外全体では213店舗から209店舗に規模が縮小した。特に中国では不景気の影響を受けているという。


 国内の家具需要の減少は予想されていたため、ニトリは家具以外の分野を強化してきた。カーテンや布団などの布もの、食器などのキッチン用品、さらに近年は家電まで取り扱いを広げている。非家具に注力した新業態として、2011年にインテリア雑貨店「デコホーム」や、2017年に小型店「ニトリ EXPRESS」を開発した。これらは主に商業施設内にテナント出店している。


 だが、布ものなどの非家具分野では、後述する無印良品のような「ブランド力」を確立できていない。家電の売り上げも年間300億円程度にとどまると報じられている。主軸である家具需要の落ち込みに、非家具分野の成長が追いついていないのが現状だ。


●“成長続き”の無印良品


 無印良品は1980年に西友のPB(プライベートブランド)として誕生し、1983年から店舗を展開してきた。無印良品の開発は、セゾングループの堤清二氏が1973年に設立した「商品科学研究所」が主導した。


 初代所長には女性が就任し、主婦によるモニタリングを取り入れながら商品を開発。堤氏の過剰な消費社会に対するアンチテーゼから、簡素なブランドになったとされている。当初は食品が中心だったが、雑貨や家具にまで手を広げた。


 1992年から都市部でワンフロアの大型店を出店し、徐々に知名度を高めた。売上高は1999年度に1000億円、2013年度に2000億円、2018年度に4000億円を突破するなど、急速に成長している。当初は都市部の店舗が中心だったが、依然として拡大の余地は大きく、現在でも地方の大型モールやロードサイドへの出店を続けている。中国大陸には2005年に進出し、2013年に100店舗を達成した。


 冒頭の通り、近年も拡大路線が続いている。2025年8月期の売上高は国内4701億円、東アジア2222億円で、その他の地域も合わせると7846億円だ。2026年2月末時点で国内700店舗を展開し、海外では中国大陸の437店舗を中心に760店舗を展開する。


 新規出店に加え、既存店売上高の著しい成長が全体の業績をけん引している。近年は化粧水などの評価や知名度が向上し、2025年8月期にはヘルス&ビューティーの国内売上高が1000億円を突破した。


●圧倒的な「ブランド力」の無印良品


 無印良品は商品別の売上高を大まかに公表している。2025年8月期の実績では「衣類・雑貨」が36.4%を占め、家具や日用消耗品、化粧品などの「生活雑貨」が46.9%、「食品」が13.3%を占める。これらの商品のうち、食器類や家具、日用品雑貨、タオルなど布ものの一部がニトリと競合関係にある。


 無印良品の成長が続くのは、その「ブランド力」が支持されているからだろう。無印良品は簡素で飾らないイメージを訴求している。バッグや貴金属などの高級ブランドとは対極の価値観だ。矛盾しているように聞こえるが、こうした高級ブランドへのアンチテーゼが、無印良品のブランド力を醸成しているのだ。


 近年、消費者の間ではロゴ無し商品やユニクロのようなシンプルなデザインが支持されており、その潮流に乗ったと考えられる。中国でもかつては「高い割にシンプル」と否定的な消費者が多かったが、簡素な商品を求める志向が広がり、現在は若者を中心に支持を集めている。


 ニトリは性能や安さが支持されているものの、無印良品ほどのブランド力はないように思える。中国でもECや現地企業を前に苦戦中だ。同じ白い皿を購入する場合、安さで選ぶならニトリ、デザイン性やイメージで選ぶなら無印良品ではないだろうか。


 ニトリは近年、化粧品やレトルトカレーを販売するなど、非家具分野で無印良品と競合する商品を強化している。だが「安さ」以外のアピールポイントを生み出せない限り、無印良品のようなブランド力を獲得することは難しいだろう。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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