ニンテンドーミュージアムや抹茶ブームが追い風に 国内外観光客が注目する京都の自治体 悩みは…抹茶のニーズに追いつかない供給

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2025年07月06日 16:10  まいどなニュース

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【資料写真】ニンテンドーミュージアム(宇治市小倉町)

 京都府宇治市の観光入込客数が昨年、初めて600万人を超えた。ゆかりがある紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」や抹茶ブームが追い風になった。今後、市は観光客の受け入れ拡大を推進するのではなく、満足度やリピーター率の向上に力点を置く方針だが、課題も出てきている。

【写真】宇治橋西詰にある紫式部像。「光る君へ」後も多くの観光客が訪れている

 「観光バスがひっきりになしに訪れ、常に満車の状態だった。覚悟はしていたけれど、これほど多いとは…」。源氏物語ミュージアム(宇治)の家塚智子館長は「大河効果」を振り返る。昨年の来館者数(無料ゾーンを含む)は前年の3倍の27万9494人で、1998年の開館以来最多となった。

 市観光振興課によると、ドラマを機に企画した源氏の連続講座や寺院の非公開文化財の特別公開なども盛況だった。担当者は「幅広い人が宇治に興味を持つきっかけになった」と手応えを語る。

 ドラマに限らず、昨年は世界的なゲーム機メーカー・任天堂の展示体験施設「ニンテンドーミュージアム」(小倉町)が10月にオープン。同月に萬福寺(五ケ庄)の国宝指定も発表され、宇治にとって観光特需に沸いた1年となった。

 観光入込客数は、前年比24・9%アップの614万5千人を記録。83年に統計を取り始めて以降、最多だった2019年の559万8千人を大きく上回った。

 経済効果もあった。昨年11月の調査(速報値)によると、1人当たりの観光消費額は日本人が6583円で、16年と比べ6割増加。訪日客(インバウンド)は1万8974円で3倍増に飛躍した。

 訪日客に関しては近年、海外で過熱する抹茶ブームが重なった。茶席を体験できる市営茶室「対鳳庵」(宇治)では訪日客が利用者の7割を占め、「『モノ消費』だけでなく、体験型の『コト消費』の人気も高い」(同課)という。

 今後も観光客の受け入れを拡大していくのか−。だが、市は具体的な数値目標を設定していない。

 代わりに、第2期観光振興計画(23〜33年度)では「観光客の満足度85%以上」や「リピーター率70%」といった指標を掲げる。繰り返し訪れるリピーターを確保しつつ、さらには「住んでみたい」と思ってもらい、定住人口の増加を視野に入れているからだ。

 指標の達成に向け、市は宇治観光をPRするプロモーションの重要性を強調する。「宇治への関心が高まっている今、歴史や文化の魅力を伝えるため、SNSなどによる発信を強化する」(同課)と力を込める。

 ただ、課題もある。

 一つは街ぐるみの連携だ。市はドラマを契機に紫式部とのゆかりをPRする手法を協議するプラットフォームを立ち上げたが、参加した民間事業者から「(市内で)一体感のあるプロモーションができていれば、より効果的な広報ができた」と反省点が指摘された。

 また宇治を発信するコンテンツである抹茶の需要が高まり、供給が追いついていない。ある茶商は「今は積極的に観光客に抹茶を宣伝するのは避けてほしい」と打ち明ける。

 さらに観光の玄関口として京阪宇治駅前に整備した「お茶と宇治のまち歴史公園」(莵道)の来場者数が思うように伸びず、機能を生かしきれていない。地域では観光客によるごみのポイ捨ての問題が浮上している。

 今年に入ってからも訪日客の増加で宇治観光は好調が続く。課題に向き合いつつ、昨年の特需を一過性にせず、今後にどうつなげるかが問われている。

(まいどなニュース/京都新聞)

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