ゲーム、TGC、VTuberまで…金融巨人SBIがエンタメ企業を“爆買い”する本当の狙い

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2026年06月04日 09:30  日刊SPA!

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成長停滞や赤字に苦しむ中小エンタメ企業を囲い込む思惑は……
SBIホールディングスが「感情経済圏」の構築を掲げ、2026年5月19日に「SBIネオメディア・サミット」を開催しました。メディアやアニメ、ゲームなどのエンタメ産業に、金融業と暗号資産などのデジタル技術を掛け合わせ、経営合理化や顧客基盤の拡大を図るというもの。しかし、この話を聞いてもSBIの事業内容とエンタメ産業の結びつきが弱いようにも感じ、あまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。その狙いについて解説します。
◆北尾氏のトップ就任が感じさせる本気度

大前提として、日本のエンタメは有望な産業です。2023年の日本発のコンテンツの海外売上は5.8兆円で、10年で3倍に成長しました。その規模は自動車産業に次ぐものであり、半導体産業や鉄鋼産業の輸出額を今や超えています。日本政府はコンテンツ産業を基幹産業と位置づけ、2033年の海外売上高の目標を20兆円としました。コンテンツ産業において、特に注目されているのが映画などの映像、アニメ、ゲーム、出版、音楽です。

SBIは2026年4月に官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)と共同で日本のエンタメ・コンテンツ分野に特化した共同のファンドを設立しました。総額125億円規模のファンドで、日本のコンテンツの海外展開の促進を目的としたもの。クールジャパン機構は100億円を拠出しています。

これに先立つこと1年ほど前の2025年5月、SBIはネオメディア生態系の構築を目指す子会社SBIネオメディアホールディングスを設立していました。代表取締役会長は、グループのトップを務める北尾吉孝氏。北尾氏が子会社の経営トップに就任したことからも、力の入っている様子が伝わります。

◆年間250億円のマーケティング費用を集約

SBIはエンタメ企業への出資を加速させています。2022年12月にゲーム開発のgumi、2025年9月に「旅色」などのメディアを手がけるブランジスタ、2026年3月に「東京ガールズコレクション」の運営会社W TOKYOなどに出資をしています。

その後も立て続けに出資を決めており、「ツイキャス」のモイや「ライブドアニュース」を傘下に持つミンカブ・ジ・インフォノイド、アニメ「超かぐや姫」などを制作したツインエンジンとも資本提携しました。VTuberマネジメント事務所「ぶいすぽっ!」のBrave groupとも戦略的提携に向けて協議・検討を行なったと発表しています。

SBIはネオメディア生態系の企業間シナジーを活かし、送客力を高めるという青写真を描いています。例えば、生態系内にあるIPやタレントのメディアミックス展開が可能であり、タレントキャスティング、SNSなどのプロモーションを行うこともできます。IPの影響力を拡大することができるのです。

また、グループの主要30社を調査した結果、広告・マーケティングコストは年間約250億円に上ると言います。SBIネオメディアホールディングスで案件を取りまとめ、代理店に一括発注することで、運用コストを下げることができ、スケールメリットを享受できるとも説明しました。

◆少額出資では関与するにも限度がある

SBIが出資した会社の中には、成長に一服感が漂っているところもあります。例えば、「ツイキャス」のモイは2026年1月期の売上成長率が1.5%でした。売上はほぼ横ばい状態が続いており、上場前後の勢いは失われています。ミンカブ・ジ・インフォノイドのメディア事業も、2026年3月期は2割を超える減収でした。

日本のコンテンツ産業は成長している一方、それを支えているのは中小企業やスタートアップが中心。独自の力で成長を続けることにも困難が伴います。ネオメディアの生態系に入ることで、新たなビジネスの創出に繋がるかもしれません。

一方、SBIが企業間シナジーを生み出すために、どのような関与を行うのかは未知数なところがあります。各企業の自主性に任されるだけだとすれば、大きな変化が生まれないかもしれません。各社の広告をSBIネオメディアホールディングスが取りまとめるというアイデアにしても、子会社や連結子会社であればともかくとして、少額出資の会社の舵取りができるわけでもないでしょう。シナジー創出に向けた取り組みは、ネオメディア構想の課題の一つとなるのではないでしょうか。

◆停滞久しいゲーム業界が活路を求めるのは…

金融機関としての強みを活かしたシナジーを生み出すことは可能です。すでにgumiとの取り組みがスタートしています。

gumiはもともと自社IPのモバイルゲーム開発に強みを持っていました。しかし、モバイルゲーム業界は停滞感が漂っており、開発費は高騰するという負のスパイラルに陥っています。巨額の開発費を投じてゲームを世に送り出しても、かつてのような大ヒットに恵まれることがほとんどなくなったのです。

そこで、gumiはブロックチェーンゲームの開発に力を入れました。ゲーム内で使用できるトークンを発行し、それをSBIの傘下にある暗号資産取引所に上場させたのです。SBIはデジタル金融領域に強みを持っており、NFTなどコンテンツ産業と相性の良い部分もあります。金融領域でのシナジーの創出には期待ができるでしょう。

SBIはネオコンテンツファンドの組成を計画しており、1000億円規模にまで拡大する予定。クールジャパン機構との共同ファンドの組成はその一環です。足元では、シナジーの創出よりも出資を加速する方向に力を入れているようにも見えます。日本のコンテンツ産業は拡大する、その未来に賭けていると言えるでしょう。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

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