いよいよPCやプリンタに浸透する“AI活用” HPが年次イベントで80種類以上の新製品を一挙に発表

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2025年03月20日 12:21  ITmedia PC USER

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HPでパーソナルシステムズ事業をけん引するアレックス・チョウ氏。今回は「この場で紹介する製品はなく、全て『AI PC』だ」とアピールした

 米HPは3月18日(米国中部時間)、米テネシー州ナッシュビルで年次パートナー会議「HP Amplify Conference 2025」を開催し、同社の最新戦略と新製品を発表した。近年「AI PC」のキーワードを掲げるPCメーカーは多いが、今回HPはメインストリーム/普及価格帯からハイエンドまで、60超のPCのラインアップを刷新し、そのほとんどを「AI PC」のカテゴリーに組み込んだ点が特徴となる。


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 PCだけでなく、大幅に強化されたセキュリティ機能を組み込んだプリンタ製品、AIを活用して企業のIT業務の効率化を実現する「HP Workforce Experience Platform(WXP)」の新機能提供など、PC業界におけるAIがより実用的な形で業界に浸透しつつあることが実感できる発表となった。


●「完全に再設計」な新製品は発表会本編ではあえて紹介されず


 カンファレンスの中で、HPのアレックス・チョウ氏(パーソナルシステムズ担当プレジデント)は「今日、我々は世界最大のAI PCポートフォリオを発表しますが、この場で皆さんに紹介する製品は1つもありません。これまでにないほどAIを活用するために、完全に再設計された60以上の新しいプラットフォーム(製品)を用意しており、全ての製品があらゆる形で仕事の未来を実現することになるからです」と述べた。


 従来の新製品発表であれば、個々の製品の特徴や性能をアピールする場面だろう。しかし今回、あえて製品を紹介しないスタンスを取った。ラインアップの全てがAI PCであり、それによって実現される世界を紹介する方が重要というわけだ。


 同社の最新戦略やAI活用に関する話題は後ほど改めてレポートするとして、本稿では膨大な新製品ラインアップの一部にフォーカスして紹介したい。


●パワーユーザーをカバーするIntel/AMDの最新CPU搭載PC


 PCの新製品群の大部分には、Intel/AMD/QualcommのNPUを統合したCPU(SoC)を搭載している。NPUのピーク性能は13〜50TOPS(毎秒13兆〜50兆回)と幅はあるものの、AIアプリケーションを低消費電力かつ高速に動作できる環境を整えており、HPが提供するAI対応アプリケーションやツールを問題なく利用できるようになっている。


 特にコマーシャル(法人)市場向けノートPCの最上位モデルである「HP EliteBook 8シリーズ」では、IntelとAMDの48〜50TOPSの性能を持つNPUを統合したCPUを備えており、Microsoftの「Copilot+ PC」に準拠した製品になっている。


 デスクトップ/タワー型の「HP EliteDesk 8シリーズ」については、NPU搭載CPUを備えることでAI PC対応を果たしたのみならず、オプションとしてNVIDIA製の外部GPUを搭載できるようになっている。また、セキュリティ対策の一貫として、内部への物理的なアクセスを試みる相手に有効な「HP Tamper Lock」(カバーの開閉検知機能)をサポートする。


 加えて、EliteDesk 8シリーズは同クラスのビジネス向けデスクトップPCとしては初の「耐量子暗号性能」を持ち、将来的に量子コンピュータによる暗号解読によってシステムに侵入される可能性を大幅に低減できるという。


 コマーシャル向けとしては、ディスプレイ一体型のオールインワン(AIO)モデルとして「HP EliteStudio 8 AiO G1i」も用意している。


 本機はオプションとしていわゆるKVM(キーボード/映像/マウス)をノートPCと共有できる「HP Device Switch」という機能を組み込める。本機とノートPCをThunderbolt 4ポートを介して直結すると、本機につないだKVMと周辺機器をノートPCで“そのまま”使えるようになる。オフィス内の「ノマドワーカー」に便利だ。ただし、HP Device Switchで接続できるノートPCは、HPが指定するもの(事前検証済みのもの)に限られる。


 コンシューマー(個人)市場向けの「OmniBook Xシリーズ」はクリエイター向けをうたうノートPCで、通常のクラムシェルタイプの17.3型モデルと、コンバーティブル式2in1タイプの14/16型モデル(OmniBook X Flip)が用意されている。ラインアップの大部分で47〜50TOPSのNPUを統合したIntel/AMD製CPU/SoCを採用しており、画像処理や動画処理においてNPUの恩恵を受けられる。


 OmniBookには他にも手頃な価格を重視した「OmniBook 5シリーズ」と、仕事や学習で高い性能を求めるパワーユーザー向けの「OmniBook 7シリーズ」が用意されている。


●「OMEN」「HyperX」ブランドのゲーミング製品にも新製品


 HPのゲーミングブランド「OMEN」「Victus」「HyperX」についてもアップデートが行われている。


 「OMEN 16 Slim Gaming Laptop」は、OMENブランドのラインアップに新たに加わる16型ゲーミングノートPCで、その名の通り最薄部で約19.9mmの薄型ボディーが特徴だ。


 CPUはIntelの「Core Ultra 200Hシリーズ」で、最上位構成ではCore Ultra 9 285Hを選べる。外部GPUは「GeForce RTX 50 Laptop GPUシリーズ」で、最上位構成ではGeForce RTX 5070 Laptop GPUを備える。


 その他、既存の「Victus 15 Gaming Laptop」「OMEN Transcend 14 Gaming Laptop」「OMEN 17 Gaming Laptop」には、搭載するCPU/GPUを刷新したリフレッシュモデルが登場する。Victus 15の一部とOMEN 17については「Ryzen AI 300シリーズ」を搭載しており、Copilot+ PCの要件も満たしている。


 ゲーミングユーザー向けに提供されるAI機能として「OMEN AI」がある。ゲームタイトルやハードウェアに合わせて必要なカスタマイズや設定について、AIを使って自動で最適なものを適用してくれるというもので、OMEN/VictusブランドのゲーミングPCだけでなく、HPブランドのコンシューマー向けPCでも利用可能だ。


 周辺機器で注目は、「HyperX Cloud III S Wireless Gaming Headset」だ。HyperXのゲーミングヘッドセット「HyperX Cloudシリーズ」の最新モデルで、その名の通りワイヤレス伝送に対応している。USBドングルを利用した2.4GHz帯通信では最大120時間、Bluetooth伝送では最大200時間のバッテリー駆動が可能だ。


 マイクはブームレスとブームタイプから選択可能で、耐久性を確保しつつカスタマイズ可能なデザインが特徴となる。


●セキュリティを強化したレーザープリンタ


 今後、量子コンピュータの技術が発展することで、暗号解読のスピードが高速化し、現状で安全とされている暗号化アルゴリズムが危機にさらされる可能性がある。このことは「コンピュータ内部のデータ漏えいリスク」という文脈で語られることが多いが、機密文書を含む重要なデータを印刷するネットワークプリンタも攻撃対象となる危険性も考慮しなければならない。


 そこでHPは、先述したEliteDesk 8シリーズと同様に、新型のネットワークレーザープリンタ「HP LaserJet Enterprise 8000シリーズ」に耐量子暗号機能を搭載した。ラインアップは「LaserJet Enterprise 8501」「LaserJet Enterprise MFP 8801」「LaserJet Enterprise MFP 8601」に大別され、LaserJet Enterprise MFP 8801についてはカラー印刷にも対応している。


 耐量子暗号性能は新設計のASICが担っており、ファームウェアへの“攻撃”を防ぐことでプリンタが送受信するデータから情報が漏えいすることを防いでいる。


 この他、既存のHP製品向けに新たに提供または機能強化を実施したサービスとして「HP Go」「HP AI Companion」「Poly Camera Pro」が挙げられる。


 HP Goは、米国の複数の携帯キャリア(AT&T/T-Mobile/Verizon)をまたいで必要に応じて5G接続が可能なeSIMサービスだ。当初は「HP EliteBook 6 G1q Notebook Next Gen AI PC」を対象に提供するが、2025年後半以降に対応PCを順次追加していくという。


 HP AI Companionは、対応可能なデータ形式やセキュリティが強化される。


 Poly Camera Proでは、Magic Backgroundによる背景エフェクトが新たに利用可能になる。いずれのサービスもNPUを活用したものとなっており、AI PCの用途が徐々にだがHP純正のアプリケーションにも拡大しつつある。



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