
開幕から節目の10年目を迎えたBリーグ・2025-26シーズンもいよいよ佳境を迎えている。5月15日からチャンピオンシップ(CS=プレーオフ)セミファイナル、そして23日からは横浜アリーナでファイナルの戦いの火蓋が切られる。
そんななか、その強さにあらためて注目が集まっているのが琉球ゴールデンキングスだ。
今季も含めBリーグ開幕から9回すべて(2020年はコロナ禍で実施なし)のCS出場を果たし、現在は優勝決定戦のCSファイナルにも4年連続出場中である。どんなに苦しいレギュラーシーズンを送っても、必ずCSで勝ち上がってくる、その強さの源流とは?
【「危険なチーム」と呼べる実績】
Bリーグのチャンピオンシップ(CS=プレーオフ)は、よく「レギュラーシーズンとは別物」と言われる。
2戦先勝方式のトーナメントという短期決戦特有の緊張感、トップ8の強者同士が長所を潰し合う繊細な駆け引き。ひとつのターンオーバーが致命傷になることもある。それぞれの要素が、レギュラーシーズン(RS)に比べて一段階、二段階と度合いを増す。
|
|
|
|
その特殊な舞台で、驚異的な強さを発揮し続けているのが、沖縄県を拠点とする琉球ゴールデンキングスである。今シーズンも、そのCS巧者ぶりは健在だ。
西地区3位(ワイルドカード2位)でCSに進出した琉球は、5月8日と9日に行なわれたクォーターファイナルで同地区2位のシーホース三河と対戦。RSと1月の天皇杯を合わせて1勝4敗と苦しめられていた難敵を相手に、愛知県の敵地ウィングアリーナ刈谷で79対65、82対79と2連勝を飾った。
これで、セミファイナル進出は8大会連続8回目。15日に始まるセミファイナルでは、琉球と同様に、東地区1位の宇都宮ブレックスを相手にアップセットを起こした西地区4位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦する。RSの成績は琉球が上位だったため、会場は琉球ホームの沖縄サントリーアリーナとなる。
さらに琉球は、2021-22シーズンから4季連続でファイナルに進出中。創設10年目のBリーグで、今回を含めて計9回すべてのCSに出場し、ベスト4入り8回は歴代最多だ。ファイナル進出4回も宇都宮、千葉ジェッツと並ぶ最多タイの数字である。インサイドを支える所属7年目のジャック・クーリーの言葉を借りれば、CSにおいて最も「危険なチーム」と言っていい。
なぜ、CSでこれほど強いのか。
|
|
|
|
【「そのレベルではCSで勝てない」RSで繰り返す自問】
理由のひとつとして挙げられるのは、CSから逆算してチーム力を底上げしていく桶谷大ヘッドコーチ(HC)の哲学がある。三河とのクォーターファイナル第2戦後、CSで強さを発揮できる理由を問われ、こう答えた。
「何のためにレギュラーシーズンを戦っているかといえば、CSのためです。このチームは、CSでどれくらいの強度が必要か、どんなバスケットをしないと勝てないかを理解しているので、レギュラーシーズンで勝ったとしても、『そのレベルでは、CSでは勝てないよね』という話ができるんです」
生え抜きの岸本隆一を筆頭に、クーリー、小野寺祥太、松脇圭志らは4季連続のファイナル進出をけん引してきた。深い経験値があるからこそ、CS基準のプレーの質が共通認識として根付いている。
特に重視するのはディフェンスだ。桶谷HCは「ペイントエリア内で簡単にスコアをさせない。そこからキックアウト(*1)されてもクローズアウト(*2)にいく。その強度の高さがあって、初めてCSで勝てる」と語る。
*1=インサイドからアウトサイドへ出すパス
*2=ボールを保持した選手に素早く距離を詰めてマークすること、容易にシュートを打たせないこと
|
|
|
|
RSでは1試合平均83.8得点の三河を60〜70点台に封じたことからも、その完成度の高さがわかる。最大の武器であるリバウンドも、RSでは本数が三河を下回る試合もあったが、今シリーズでは2試合とも約10本上回った。オフェンスでは、機動力の低いダバンテ・ガードナーをペイントアタックなどで狙い続け、そこから崩して得点を重ねた。
【順風満帆ではなかった今季 終盤で上昇】
各選手に成長を促しながら役割を明確化し、高いチーム力へ昇華させる能力にも長ける桶谷HC。「個々の能力を生かし、それぞれの尖った部分をしっかり作っていくことで、輪が大きくなる」と独自のチーム観を語る。
互いへの理解を深め、持ち味を引き出し合いながら総合力を底上げしていくため、シーズン中にぶつかる課題を重視する。
「いろんな課題が出て、それを潰していくことで、選手、チームは成長します。今季も勝てない時期やしんどい思いをクリアしてきたので、同じような駆け引きの場面が出てきた時の対応力がついているのだと思います」
実際、今季は順風満帆ではなかった。ホーム開幕戦で2連敗し、外国籍パワーフォワードのケヴェ・アルマが途中退団。ガードもでき、タイプの異なるデイミアン・ドットソンを獲得したが、東アジアスーパーリーグも含む過密日程の中で連係構築に苦しみ、前半戦終了時点ではCS圏外だった。
それでも、徐々にディフェンスの連動性や、ペイントアタックを主体としたオフェンススタイルに磨きをかけ、後半戦30試合を24勝6敗のリーグ最高勝率で駆け抜けた。もっとも、数少ない黒星は、ほぼ三河や名古屋Dなどの上位陣相手だった。
その敗戦を糧に、CSで勝つための成熟のプロセスを止めず、徹底したスカウティングで三河戦に臨んだ琉球。その大一番での強さには、三河のライアン・リッチマンHCも「琉球は勝ち方を熟知している」と脱帽するほどだった。
【目の前のことに120%を注ぐ岸本の変化】
桶谷HCは、CSで強さを発揮する理由について、CS経験の深い選手たちの名前を挙げたうえで、「一番は、冷静でいられるところだと思います」とも語った。さらに続きがある。
「シュート1本を決めて『うわぁ』じゃないんですよ。この世界って。勝負どころで冷徹にならないと、相手を倒せない。このチームはそれを知っています。ファイトしながら、冷静に戦うことがCSには必要です」
RS最終盤で負傷離脱した昨シーズンを除き、これまで8回のCSでコートに立ってきた百戦錬磨の岸本も、同じような認識を持つ。
「CSはひとつのことにとらわれていたら終わってしまいます。いいプレーをしても、望まないプレーをしても、いかに次のプレーに集中できるかが大事。むしろ、そこしかないくらい。そういった部分が、自分たちの冷静さ、CSの独特な戦い方につながっているのだと思います」
感情の動きに左右されず、一つひとつのプレーに100%、時には120%の力を注ぐ。この思考は、CSでの岸本にある変化をもたらしている。ディフェンス強度の向上だ。
普段はオフェンスの司令塔としての役割により力を注ぐが、本人も「正直、そこ(ディフェンス強度)はレギュラーシーズンとは違うと思っています。ベンチワークなど見えない部分も含め、みんながハードワークしないと勝てないという思いがあります」と言う。
クォーターファイナルでは三河のガード陣にプレッシャーをかけ続け、第2戦終盤にはバックコートバイオレーションを誘発。その後、勝利を引き寄せる値千金の3ポイントシュートを自ら沈めた。一連のクラッチプレーは、まさに冷徹そのものだった。
長丁場のRSで積み重ねてきた、CSで勝つために必要な強度、そして分厚い経験に裏打ちされた冷静さ。その基準がチーム全体で共有できているからこそ、琉球は今年もまた、CSで「危険なチーム」になっているのだろう。
