メガネに装着すると、頭の小さな動きだけでPCなどのデジタルデバイスを直感的に操作できる「JINS ASSIST」。発売と同時に即完売(3月19日時点では再入荷済み)した人気アイテムですが、製品を体験することができましたので、より深く掘り下げてみたいと思います。先に結論を書くと、障がいのある方の可能性を広げるだけでなく、私たち健常者の日常にとってもメリットのある製品でした。
JINS ASSISTは、専用メガネではなく、手持ちの一般的なメガネに装着して使います。本体は一口サイズのチョコレートを思わせるサイズ感で、重さはわずか13g(本体4g、ケーブル9g)。
対応OSは、Windows 10以降とmacOS 13以降。接続方法はUSB-TypeCポートを使っての有線接続です。「え? 無線じゃないの?」と思った方も多いはず。でも一方で、有線接続には「すぐに使える」「設定が簡単」というメリットがあります。むしろBluetooth接続のペアリングや電池切れの心配がないのは、障害のある人も使うということを考えるとシンプルで優れた設計といっていいと思います。
また、iOSでもiOS 13以降でアクセシビリティ機能を有効にすることで動作可能となっているため、USB-TypeC端子があるiPhoneやiPadで使うこともできます。Androidでも動作しますが、3ボタンナビゲーションで使うことが推奨されています。
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●実際に使ってみた
セットアップも簡単。普段使っているメガネに付属のアタッチメントで固定するだけです。
メガネにつけていてもほとんど重さを感じず、左右バランスがおかしくなるということもありません。あまりにもすんなり使えることには正直びっくりしました。
今回はPCでテストするため、後は本体のUSBケーブルをPCに接続します。使うときにケーブルがじゃまになるかなと思いましたが、耳にケーブルをかけてしまえば、使用中もそれほど気になりませんでした。
PCの操作は「JINS ASSISTアプリ」(Windows版、macOS版)という補助ソフトと合わせて使います。
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JINS ASSISTアプリは、各種設定に加えてクリック選択の際のアシストなどをしてくれます。ただ、役割としていちばん大きいのはチュートリアルでしょう。
このチュートリアルで、ユーザーはJINS ASSISTの操作に慣れると同時に、チュートリアルをこなすことで機能のロックが外れ、フル機能を使えるようになっていきます。JINS ASSISTという、ほぼ誰にとっても初めて操作する機器では、このチュートリアルという過程がとても大事です。
実際のチュートリアルは、1)カーソル移動、2)左クリック、3)右クリック、4)ドラッグ&ドロップといったように段階的に進みます。いずれも首を動かすことでコマンドを送ります。最初はぎこちなかった動きも、このチュートリアルを終わる頃には自然に操作できるようになっていました。
また、これはとてもよくできていると思ったのが、マウスの動きがおかしくなったりしたときに、すぐにJINS ASSISTをリセットできるようになっているところです。とにかくおかしくなったら、リセット。そして、リセットすれば、自分のメガネの正面にマウスカーソルが戻ってくるので、とても分かりやすいです。
さらに操作をしやすくしているのが、操作と音が同期しているところです。JINS ASSISTで操作すると、ジジっと音が鳴ります。その音があるおかげで、今JINS ASSISTがうまく動作していると分かります。
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これもJINS ASSISTを使っていると、すぐに分かるのですが、首を動かすコマンドを忘れてしまっても、カーソルを何か動作したいところに動かすとちゃんと“できること”(コマンド)の一覧が表示されます。
つまり、使っているうちに勝手にどんどん覚えていけるようになっているわけです。操作に慣れてきたら、JINS ASSISTアプリで設定はさらに追い込んでいくことも可能ですし、ショートカットの設定も可能でした。
●こんなに自然だったとは
予想外だったのは「意外と疲れない」ということ。コマンドは徐々に覚えていけばいいとはいえ、そもそも操作しているだけで疲れるようであれば、それどころではないですから。
JINS ASSISTは、もともと障害などで従来型のデジタル機器が使えない人のために設計されたものです。でも、健常者でも両手がふさがっている時、何か作業しながらPCを操作したい時など、JINS ASSISTがあるといいと思える場面はいくらでもあります。
私自身、シチュエーションでマウスとトラックポイントを使い分けていますが、いずれにも手はふさがってしまいます。例えば、プラモデルを作る場面では、参考になる動画を見ながらとか、画面上にマニュアルなどを表示させ、作業をしつつページをめくるなんて時にも、JINS ASSISTがあれば、作業の手を止めずに操作できます。より実用的なシーンとしては、会議中のプレゼン操作や工場での作業中のPC操作なども想像できます。
JINSには以前「JINS MEME」という製品がありました(24年3月に一般販売終了)。JINS MEMEはセンサーで眼の健康だけでなく、カラダ全体の健康を計測するメガネ型のデバイスだったのですが、その発売直後からJINSには「メガネでPCなどを操作したい」という声が届いていたそうです。
振り返ってみれば、コンピューターの操作方法は常に進化してきました。キーボード、マウス、タッチスクリーン、音声入力……。JINS ASSISTは、私たちの日常に溶け込んでいるアイテムを利用することで、その進化の最前線にいるデバイスの1つともいえます。
デジタルデバイドの解消という社会的意義を持ちつつ、健常者にとっても作業効率の向上や疲労軽減など、新たな価値を提供してくれる可能性を秘めたJINS ASSIST。テクノロジーの進化は、時に「特定の人のため」から始まって、結果的に「みんなのため」になることがあります。JINS ASSISTもそんな製品の一つになるかもしれません。
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