DeNA・尾形崇斗(撮影=萩原孝弘) 電撃トレードからわずか3日後。真新しいベイスターズのユニフォームに袖を通し、新天地での初先発マウンドに上がった尾形崇斗。1か月半ぶりの先発登板でトラックマン計測158キロ、ホップ成分61センチという驚異的な数値を叩き出し、その実力を知らしめた。
15日に27歳の誕生日を迎えたばかりの剛腕が、横浜の地で思い描く“165キロ”の壮大なプラン。時を経て再び出会った名伯楽も唸る、27歳の野球道を紐解く。
◆ 名伯楽も「涙が出ました」。140キロ未満から始まった剛球の軌跡
移籍後初となる先発マウンドを終えた尾形崇斗の言葉には、調整段階ながらも確かな手応えがあった。
5回を被安打2、奪三振7、無失点の堂々たるピッチングを披露。そして圧巻だったのは、そのポテンシャルの高さを示すトラックマンのデータだった。
球団の計測でストレートの最速は158キロをマーク、回転数は2600を超え、ホップ成分は61センチを記録した。ホークス時代と遜色ない驚異的な数値を叩き出しながらも、本人は「まだこう、身体のところが…。まだ来たばっかりで、うまくトレーニングできてなかったりとかしているので」と、これが決して100%の状態ではないことを強調する。
その姿をベンチで見つめ、思わず「涙が出ましたよ。ほんとすごいですよね」と胸を熱くさせていた指導者こそ、入来祐作ファームチーフ投手コーチである。
尾形がホークスに入団した当時、三軍で指導していたコーチは、その姿を鮮明に覚えている 。 「だって僕は彼をずっと見ていましたからね。入団したときは140キロ届かん子でしたから」
今や160キロに迫る剛腕の過去。「とにかく何でも全力でやる子だったんで。そうやって自分でたくさん回り道をして、その中で自分の正しい努力の仕方を見つけて今に至るんだと思うんすよ」。
妥協を許さないホークスという環境で、フィジカルの重要性と正面から向き合い、限界まで己を追い込んできた先に手に入れた剛球。だからこそ「元々あんな球投げてたわけじゃないですから。同じ年代の子たちが感じてほしい。こんなに変われるんだよってところをね」とチーム内にも好影響を与える存在だと頷いた。
◆ 最新データへの渇望と、マウンド上での「高い感覚論」
入団会見から球界屈指の最新機器でのデータ集積に関心を寄せていた右腕。入来コーチも「股関節や肩の可動域がしっかり取れる、身体の関節の柔らかい子」とその高い身体的特徴を把握しつつ 「理論派というか、何でも知りたい、何でも一生懸命やってみたいという子。その環境の中でいろんなことを勉強したい子です」と、尾形の旺盛な探究心に一目置く。
本人ももちろん「うまく活用して、自分の中にしっかり取り入れていきたいなと思います」と、貪欲に吸収したいと目を輝かせる。
ソフトバンクでも動作解析には興味津々で、この日の投球フォームにも明確な意図があった。足を上げスムーズに着地するときと、一旦足をひねるようなアクションを入れる場面も見られた。
「投球のメカニックの部分が崩れてきたときに、ちょっと身体にねじる部分をうまく入れると、並進のスピードが戻ってくるんです。そこをちょっと入れながら、バッターと勝負しながら修正していくことはやっています。バッターのタイミングが外れることも、副産物としてあるんですけど、一番は自分の軸がブレないように、そこのタイミングが合えばいいのかなと思っていますね」
高い感覚論は探究心と相まって、アジャスト能力として今に活かされている。
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◆ 引き継がれた36番と165キロへのこだわり
「自分がやるべきことと自分が向かうところっていうのは、どのチームにいても変わらないと思います。常に上を目指して、日本を代表して世界でしっかり戦えるレベルに持っていくっていうのは、長い時間をかけて丁寧にやっていきたい」
その視線の先にあるのはワールドクラスのピッチャー。現在の球速では「普通よりちょっと速いかなぐらい。向こうではそれをアベレージを投げれらるピッチャーがごまんといます」と自覚している。
だからこそ、将来的な「165キロ」の到達という壮大なプランがある。「明日、明後日っていう話じゃなくて、3年、4年、5年ってかけて毎年更新しながらやっていくというプランです。しっかりゾーンに投げれる165キロっていうのは間違いなく通用すると思うので、そこは1つしっかり求めていきたい」
140キロに満たなかった少年は、血の滲むような“正しい努力”によって、剛腕右腕へと変貌を遂げた。
入来コーチがベイスターズで最後に背負った36を継ぎ「まずはしっかり今年優勝できるように頑張ります」と言い切る27歳は、誰もが目を見張る快速球でいきなり横浜の地を沸かせてみせる。
取材・文=萩原孝弘